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千一夜
第17章 第四夜 線状降水帯 ①

女が車に乗ったら男はやはりこう言うだろう「ひどい雨ですね。ところでどちらまでお送りすればよろしいですか?」と。女はしばらく黙っている。カメラは女の濡れた体を映す。そしてカメラは下から上にゆっくり映し出していく。女の口、鼻、それから目。最後に女の顔を。
ミステリーはこうでなければならない。
女の台詞はどうする? 黙ったままも悪くないが、何か一言あってもいい。どうする?
あほくさい。そんなシーンを考えている場合ではない。雨の勢いが止まらない。さっきよりも激しくなったような気がする。伊藤は焦れてきた。我慢もここまで。でもスピードは出せない。そんなことを思っていたときだった。少し前方に何かのお店の光が見えた。雨のせいでその光はぐにゃぐにゃ揺れていたが、その光は線状降水帯の中でオアシスのように見えた。
車が近づいていくとその光はコンビニエンスストアの光だということがわかった。助かった、伊藤はそう思った。
このまま車を運転するより、少し休憩を入れた方がいい。いや、こんな状況の中で車を運転すること自体無理だ。伊藤は車をコンビニの駐車場にゆっくり入れた。車を出ると急いでコンビニに駆け込んだ。
「あー助かった」
伊藤はコンビニに駆け込むなりそう言った。
「いらっしゃいませ。ひどい雨ですね」
男の店員だった。
「ここにコンビニがあって助かりました。少し雨宿りさせてもらって構いませんか」
「どうぞ」
「ありがとう」
店員のネームプレートが伊藤の目に入った。[店長 星野]と書かれていた。六十代前半、白いものが混じった髪を星野はオールバックにしていた。
伊藤はコーヒーマシンでアイスカフェラテを買った。
「すみません、ここで飲んでもいいでしょうか」
イートインのスペースがこのコンビニはない。
「どうぞ。こんな雨です、雨が落ち着くまでゆっくりしてください。本部はうるさく言うでしょうが、この雨でお客さんに帰れとは言えません」
星野は外に顔を向けてそう言った。
「助かります」
コンビニの決まりとしてはいけないのだろう。しかし星野は伊藤が店内でコーヒーを飲むことを許した。
伊藤はコーヒーを飲みながら外に目を向けている。雨が弱くなるのを待っているのだが、コンビニのガラスにも雨は強く当たる。まるで台風だ。もちろん台風がくるなんて予報はない。
ミステリーはこうでなければならない。
女の台詞はどうする? 黙ったままも悪くないが、何か一言あってもいい。どうする?
あほくさい。そんなシーンを考えている場合ではない。雨の勢いが止まらない。さっきよりも激しくなったような気がする。伊藤は焦れてきた。我慢もここまで。でもスピードは出せない。そんなことを思っていたときだった。少し前方に何かのお店の光が見えた。雨のせいでその光はぐにゃぐにゃ揺れていたが、その光は線状降水帯の中でオアシスのように見えた。
車が近づいていくとその光はコンビニエンスストアの光だということがわかった。助かった、伊藤はそう思った。
このまま車を運転するより、少し休憩を入れた方がいい。いや、こんな状況の中で車を運転すること自体無理だ。伊藤は車をコンビニの駐車場にゆっくり入れた。車を出ると急いでコンビニに駆け込んだ。
「あー助かった」
伊藤はコンビニに駆け込むなりそう言った。
「いらっしゃいませ。ひどい雨ですね」
男の店員だった。
「ここにコンビニがあって助かりました。少し雨宿りさせてもらって構いませんか」
「どうぞ」
「ありがとう」
店員のネームプレートが伊藤の目に入った。[店長 星野]と書かれていた。六十代前半、白いものが混じった髪を星野はオールバックにしていた。
伊藤はコーヒーマシンでアイスカフェラテを買った。
「すみません、ここで飲んでもいいでしょうか」
イートインのスペースがこのコンビニはない。
「どうぞ。こんな雨です、雨が落ち着くまでゆっくりしてください。本部はうるさく言うでしょうが、この雨でお客さんに帰れとは言えません」
星野は外に顔を向けてそう言った。
「助かります」
コンビニの決まりとしてはいけないのだろう。しかし星野は伊藤が店内でコーヒーを飲むことを許した。
伊藤はコーヒーを飲みながら外に目を向けている。雨が弱くなるのを待っているのだが、コンビニのガラスにも雨は強く当たる。まるで台風だ。もちろん台風がくるなんて予報はない。

