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千一夜
第17章 第四夜 線状降水帯 ①

「あっそうだ。店長さんはスマホをお持ちですか?」
「……」
星野はにこりと笑って圏外と表示されたスマホの画面を伊藤に見せた。
「この雨のせいでしょうか?」
「かもしれませんね。実はお客さんが来る少し前に停電したんです」
「停電ですか」
「はい。幸いすぐ復旧したのでこうして営業できるのですが」
「大変でしたね」
「ええ、今このコンビニは陸の孤島なんです」
「陸の孤島?」
「固定電話が使えません。ですからこのコンビニから連絡もできなければ連絡も入ってこない状況なんです。雨のせいなら雨が落ち着けば元通りになると思います」
「雨の野郎、早く止んでくれ」
「全くその通りです」
そう言って、星野はにこりと笑った。伊藤は店内をぐるりと見まわした。違和感を覚えた。何だかおかしい。
「あの、今このお店はお一人なんですか?」
辺りは暗かったが、まだ夕方という時刻だ。この時間からコンビニがワンオペになるはずがない。
「アルバイトの子が二人来る予定なんですが、この雨でどうやら今日はお休みのようです。連絡もできないし、連絡も来ません」
「大変ですね」
やはり何だかおかしい。アルバイトが来ないのに「お休みのようです」はさすがにない。確かに雨はひどくて連絡できないのかもしれないが、これって立派な無断欠勤だろ。
伊藤はもう一杯コーヒーマシンでコーヒーを買った。今度はホット。
暖かいコーヒーが伊藤の喉を通ると、コンビニの勤務形態を考えている自分がおかしく思えた。人のことより自分の今を考えろ、と伊藤は思った。
コーヒーのお蔭で伊藤の心がだんだん落ち着いていった。そのときだった。コンビニのドアが開いた。伊藤は遅刻のバイトかと思って目をやったが、伊藤の予想は見事に外れた。
ドアが開いてコンビニには入ってきたのは、びしょ濡れの女だった。青いデニムを穿いて、ピンク色の長袖のブラウスを着ていた。雨のせいでブラウスは女の肌にぴたりとくっつきブラジャーが透けて見えた。大きな胸に伊藤の目が釘付けになった。
スタイルのいい女だ。伊藤は女の顔を見た。何といえばいいのか女の顔は豹のようにシャープだった。猫のような大きな目に高い鼻。きりりとした口元は、伊藤には厭らしく見えた。
こんないい女が、この雨の中どうしてコンビニになんかやってきたのだろうか。
「……」
星野はにこりと笑って圏外と表示されたスマホの画面を伊藤に見せた。
「この雨のせいでしょうか?」
「かもしれませんね。実はお客さんが来る少し前に停電したんです」
「停電ですか」
「はい。幸いすぐ復旧したのでこうして営業できるのですが」
「大変でしたね」
「ええ、今このコンビニは陸の孤島なんです」
「陸の孤島?」
「固定電話が使えません。ですからこのコンビニから連絡もできなければ連絡も入ってこない状況なんです。雨のせいなら雨が落ち着けば元通りになると思います」
「雨の野郎、早く止んでくれ」
「全くその通りです」
そう言って、星野はにこりと笑った。伊藤は店内をぐるりと見まわした。違和感を覚えた。何だかおかしい。
「あの、今このお店はお一人なんですか?」
辺りは暗かったが、まだ夕方という時刻だ。この時間からコンビニがワンオペになるはずがない。
「アルバイトの子が二人来る予定なんですが、この雨でどうやら今日はお休みのようです。連絡もできないし、連絡も来ません」
「大変ですね」
やはり何だかおかしい。アルバイトが来ないのに「お休みのようです」はさすがにない。確かに雨はひどくて連絡できないのかもしれないが、これって立派な無断欠勤だろ。
伊藤はもう一杯コーヒーマシンでコーヒーを買った。今度はホット。
暖かいコーヒーが伊藤の喉を通ると、コンビニの勤務形態を考えている自分がおかしく思えた。人のことより自分の今を考えろ、と伊藤は思った。
コーヒーのお蔭で伊藤の心がだんだん落ち着いていった。そのときだった。コンビニのドアが開いた。伊藤は遅刻のバイトかと思って目をやったが、伊藤の予想は見事に外れた。
ドアが開いてコンビニには入ってきたのは、びしょ濡れの女だった。青いデニムを穿いて、ピンク色の長袖のブラウスを着ていた。雨のせいでブラウスは女の肌にぴたりとくっつきブラジャーが透けて見えた。大きな胸に伊藤の目が釘付けになった。
スタイルのいい女だ。伊藤は女の顔を見た。何といえばいいのか女の顔は豹のようにシャープだった。猫のような大きな目に高い鼻。きりりとした口元は、伊藤には厭らしく見えた。
こんないい女が、この雨の中どうしてコンビニになんかやってきたのだろうか。

