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千一夜
第17章 第四夜 線状降水帯 ①
 女の名前は北条碧(みどり)。歳は二十七だと言った。何でも休暇を利用してこの近くに所有している別荘にやって来たのだそうだ。残念ながら夫付きで。碧の話によると碧の夫は別荘に着くなり熱を出して、今別荘で休んでいる。だから仕方なく一人で買い物に出かけた。
 夫は三十五だと言っていた。碧は夫の名前を言ったが、夫の名前なんか伊藤にはどうでもいいことだ。この先この夫婦とは永遠に会わないだろうし、だったら車の中のこの時間だけが伊藤には大切なのだ。何だったらどこかに車を止めてこの女を犯したいくらいだ。そう伊藤は思った。つまりそのくらいいい女で、いいい女はいい体をしていた。多分あそこも。
 雨の匂いと碧がまとっている香水、そして碧の肌の匂い。車内で伊藤は思う存分碧を愉しんでいた。伊藤は何度か車を止めることができる場所を探した。こんな雨の中、車を走らせているのは多分自分だけだ。マセラティは目立つが、その中で何をしているのかなんて誰も気に留めない。
 何とかそういう雰囲気に持ち込みたい、そのためには碧との会話が大切になる。きっかけが欲しい、女をさり気なく誘う話に近づけたい。伊藤はだんだん我慢できなくなってきた。
 しかしそういうときに限って車内での会話は、伊藤の仕事の話であったり伊藤の趣味の話になっていった。
 そしてとうとう碧の別荘に到着した。伊藤は時計などもう見ていない。だから時間がどれだけ経過したのかがわからない。
「着きました」
 碧はそう言って、視線を別荘に向けた。伊藤が碧の視線の先を窺う。何とも不思議な建物だった。暗い中でも家の色が青だということがわかる。古い二階建ての洋館。外壁は下見板張り。
 伊藤は「素敵な別荘ですね」と言いたかったが、どうしてもその言葉が出てこない。
「ちょっと変ですよね」
 碧は戸惑っている伊藤にそう言った。感情が顔に出ていることに伊藤は気付いた。
「いや、そんなことはありません。僕には別荘を持っている友人がいませんし、別荘に招かれたことがないんです。だから僕には別荘なんてちんぷんかんぷんで」
 伊藤は嘘を言った。伊藤には別荘持っている友人はいるし、その友人から何度も別荘に招かれている。
 ここでお別れか、伊藤は少し寂しくなった。こんなにいい女と別れるのは辛い。
 ところが……。
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