この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
千一夜
第19章 第四夜 線状降水帯 ③

川上はるかは伊藤が予想した通りの女だった。初めてのデートで伊藤と川上はキスをして互いの体を触り合った。そして二回目のデートで伊藤と川上は結ばれた。
せいぜい三か月くらいの付き合いだと伊藤は思っていた。飽きれば他の女に乗り換えればいい。幸い言い寄ってくる女は川上だけでなかった。ところが付き合いは伊藤が思っていた以上に長くなった。
中学を卒業すると伊藤は地元の進学校に進んだ。高校に通っても伊藤は川上と別れなかった。伊藤は高校を出ると東京のW大学文学部に入学した。大学では演劇と映像を学んだ。在籍時に監督した映画が、アマチュア映画祭の最優秀作品賞に選ばれた。
大学二年になったとき、東京の短大に進学した川上と伊藤は同棲を始めた。高校でも大学でも伊藤の女は川上一人ではなかった。伊藤はそれを隠そうとはしなかった。そして川上も伊藤に自分以外の女がいても責めはしなかった。
伊藤が川上と別れなかったのにはいくつか理由がある。川上は伊藤に女がいても見て見ぬ振りができた。伊藤はそれをいいことに遊びまくった。アパートに帰れば川上がいる。別の女を抱きたいときは、芝居をしている女を適当に漁った。伊藤は大学演劇界でも頭が一つも二つも抜けた存在だった。
そしてこれが一番大事なのだが、伊藤は川上の体に溺れていた。いつかは飽きるだろうと思っていたが、川上の体は違った。川上の体は伊藤を引き付けて離さなかったのだ。
伊藤は挫折を知らない。大学を卒業すると在京のテレビ局に入社した。テレビ局ではもちろんドラマ部門に配置され、入社後からドラマ制作ではその才能をいかんなく発揮した。
伊藤が担当するドラマに外れはなかった。作れば必ず当たる。スポンサーが伊藤を指名することもあった。
伊藤が業界の中で力を持つと、芸能界の各方面から伊藤にアプローチが掛けられた。来るものは拒まず。高校・大学と違って伊藤にすり寄ってくるのは駆け出しの女優、そしてアイドル達。伊藤はその女たちをすべて食った。女優やアイドルの味は格別だった。女たちを抱くたびに伊藤は優越感に浸れた。世間の男どもの憧れを自分が美味しく頂いている。伊藤は自分が勝者だと思った。同時に川上はるかがだんだん邪魔な存在になっていった。
「わかれてくれ」
「いや」
こうして伊藤と川上の言い争いは毎晩続いた。
せいぜい三か月くらいの付き合いだと伊藤は思っていた。飽きれば他の女に乗り換えればいい。幸い言い寄ってくる女は川上だけでなかった。ところが付き合いは伊藤が思っていた以上に長くなった。
中学を卒業すると伊藤は地元の進学校に進んだ。高校に通っても伊藤は川上と別れなかった。伊藤は高校を出ると東京のW大学文学部に入学した。大学では演劇と映像を学んだ。在籍時に監督した映画が、アマチュア映画祭の最優秀作品賞に選ばれた。
大学二年になったとき、東京の短大に進学した川上と伊藤は同棲を始めた。高校でも大学でも伊藤の女は川上一人ではなかった。伊藤はそれを隠そうとはしなかった。そして川上も伊藤に自分以外の女がいても責めはしなかった。
伊藤が川上と別れなかったのにはいくつか理由がある。川上は伊藤に女がいても見て見ぬ振りができた。伊藤はそれをいいことに遊びまくった。アパートに帰れば川上がいる。別の女を抱きたいときは、芝居をしている女を適当に漁った。伊藤は大学演劇界でも頭が一つも二つも抜けた存在だった。
そしてこれが一番大事なのだが、伊藤は川上の体に溺れていた。いつかは飽きるだろうと思っていたが、川上の体は違った。川上の体は伊藤を引き付けて離さなかったのだ。
伊藤は挫折を知らない。大学を卒業すると在京のテレビ局に入社した。テレビ局ではもちろんドラマ部門に配置され、入社後からドラマ制作ではその才能をいかんなく発揮した。
伊藤が担当するドラマに外れはなかった。作れば必ず当たる。スポンサーが伊藤を指名することもあった。
伊藤が業界の中で力を持つと、芸能界の各方面から伊藤にアプローチが掛けられた。来るものは拒まず。高校・大学と違って伊藤にすり寄ってくるのは駆け出しの女優、そしてアイドル達。伊藤はその女たちをすべて食った。女優やアイドルの味は格別だった。女たちを抱くたびに伊藤は優越感に浸れた。世間の男どもの憧れを自分が美味しく頂いている。伊藤は自分が勝者だと思った。同時に川上はるかがだんだん邪魔な存在になっていった。
「わかれてくれ」
「いや」
こうして伊藤と川上の言い争いは毎晩続いた。

