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千一夜
第20章 第四夜 線状降水帯 ④
「伊藤さん、休みはどちらへ?」
「葉山」
「いいな、俺も早く別荘持ちたいな。そうだ伊藤さん、車売るときは一言言ってくださいよ」
「何で」
「新車のマセラティでしょ。俺だって乗りたいですよ」
「健吾に金がないのはわかってるから、声なんか掛けないよ」
「社員割引ということで」
「割り引いても健吾には買えない。なぜなら僕は健吾の収入を知っている」
「ですよね、ははは」
 マセラティが悪いわけではない。強いて言えばあの雨だ。あの雨に足止めさせられたせいで悪夢を見る羽目になったのだ。伊藤はまだ蛙が自分の体を這い上ってくる感じがしてならない。蛙に噛まれたあの痛み。忘れたいがどうしても忘れることができない。
「これ預かっておくわ」
 伊藤は沢井ゆかりの履歴書とスナップ写真を石丸に掲げてそう言った。
「了解です」
「健吾が言うどこかのシーンを探しておく。あれば使うし、なければこれはまたシュレッダーにかけられてずたずたになる」
「何だか空しいですね」
「空しくずたずたにされるのはこの子の写真だけじゃない」
「わかりました。それじゃあ伊藤さん、休暇をたっぷり楽しんできてください」
「ああ」
 伊藤がアストンマーティンDBSのアクセルを踏み込むとⅤ型12気筒のエンジンが唸り、黒いアストンマーティンが一気に加速していった。エンジン音をききながらシートに身を任せてハンドルを操作しても、伊藤の心はどうしても晴れない。
 フロントガラスにときおりあの青い蛙が映るのだ。伊藤がジャンプしたときに目の前に現れた蛙だ。その蛙は伊藤を見て笑っていた。薄気味悪い笑い方だった。
 葉山で海を見たかった。ただぼんやり海を見る。残念ながら伊藤の別荘まで波の音は届かないが、それでも潮風は伊藤の別荘まで運ばれる。
 テラスでウイスキーを飲みながら、海の時間が過ぎていくのを一人で見送る。
 伊藤は最近女を抱いていない。夢で蛙に食われそうになったが、その同じ夢の中で碧と出会った。碧を越える女が伊藤の周りにはいない。ひと月五百万の契約で、現役セクシー女優を斡旋してくるような事務所の誘いも最近は断っている。
 伊藤はこう思うことにした。今は充電期間だ。羽ばたくための時間と考えればいいのだ。焦ることなんかない。女は向こうから勝手にやってくる。
 別荘に到着。伊藤が車を別荘の敷地内に入れたときだった。誰かが車に近づいてきた。
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