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千一夜
第20章 第四夜 線状降水帯 ④
 ファミレスに頼んだデリバリーだったが、ゆかりの旺盛な食欲に伊藤は驚いた。サラダとパスタ、そしてハンバーグをゆかりは残さず食べた。ゆかりには悪いが、平らげたという表現が一番あっている。
 ビールを飲みながら伊藤はゆかりの食べっぷりをずっと見ていた。驚きはしたが、どういうわけか伊藤の心はほんのりと温まった。
 スタイルを気にして食べる量をコントロールする役者は少なくない。体質なのだろうか、おそらくゆかりはどれだけ食べても太らない遺伝子を親から引き継いでいる。
「よかったら僕のも食べていいよ」
 これだけ食べて流石にゆかりは遠慮するかと伊藤は思ったが、ゆかりは「いいんですか? いただきます」と言って手付かずの伊藤のパスタを食べ始めた。
 伊藤はもう驚かなかった。驚く代わりに笑いが込み上げてきた。
 ゆかりが食べ終わったとき、伊藤はどうしても訊ねなければならないことを思い出した。
「訊いてもいいかな?」
「はい」
「ここが僕の別荘だということを誰が君に教えたんだい。それにどうして今日僕がここにくることを君は知っているんだい?」
 心当たりは一人だけ、映像スタッフの石丸健吾。だが、自分の会社の人間が簡単に自分の個人情報を誰かに教えるなんてことはない。伊藤の個人情報を簡単に漏らすスタッフは、伊藤の会社にはいない。伊藤は自分の会社のスタッフを信じている。
「秘密」
 ゆかりの答えはとてもシンプルだった。
「秘密か」
 伊藤は自分の秘密を誰がゆかりに教えたのか気になったが、それ以上ゆかりには訊ねなかった。秘密は秘密のままが一番いい。
「今日ここに泊めてもらえませんか?」
 唐突にゆかりはそう切り出した。
「……」
「ダメですか?」
「僕が間違っていたらごめん。君は僕と寝たら役をもらえると思っている?」
「思っていません」
「どうして?」
「伊藤さんはそう言う人ではないとある人から教えていただきました」
「ある人?」
「ある人です」
 秘密、そしてある人、伊藤はゆかりに惑わされているような気がした。
「構わないよ。でも正直僕は紳士じゃない。君をここに泊めれば間違いなく僕は君を抱く。間違いなくね。それでいいの?」
「いやです」
「ははは」
 伊藤は大笑いした。
「そんなにおかしいですか?」
「ごめんごめん、タクシーを呼ぶよ。お金のことなら心配しなくていい」
「ありがとうございます」
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