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千一夜
第20章 第四夜 線状降水帯 ④
 いつの間にか伊藤はコルビジェの上でうとうとしてしまった。ジャズの巨人は演奏を終えたていた。伊藤は眠い体を何とか動かしてベッドに移った。ふと碧のことを思い出した。蛙は御免だが、碧には会いたい。眠りに落ちたら碧に会えるのではないかと伊藤は思った。伊藤は少しだけ期待して深い眠りの世界に入りこんでいった。
 伊藤は夢を見ることはなかった。朝まで目が覚めることなくぐっすりと眠れた。爽快な気分で朝を迎えたのに、こういうときに限って邪魔が入る。スマホが着信音を鳴らしたのだ。
 伊藤の休日に電話を掛けてくるバカな社員は伊藤の会社にはいない。業界関係者でも伊藤に連絡を取る場合は休日を避ける。
「もしもし、お兄ちゃん」
 電話は伊藤の二つ下の妹からだった。
「何?」
「確認なんだけどさ、来週の金曜から日曜までお兄ちゃんの別荘借りるね」
「そんな約束したか?」
「したわよ。久々の家族旅行なんだから」
「まさか葉山じゃないよな」
「あんな小っちゃい別荘なんてこっちがお断りよ。軽井沢のほうだから」
「勝手にしろ」
「サンキュー、お兄ちゃんがリッチでよかった。あっ、それから慎吾と舞香がおじさんのタワマン見たいんだって、だから来月うちの家族招待してよ」
「お前ら何様なんだ」
「お兄ちゃんの妹家族御一行様です」
「あほ」
「あほでも何でもいいからお願いね。そのとき家の中に変な生き物がいないようにしててよ。慎吾と舞香の教育によろしくないので。それから俳優のH・Yさんに会いたいな。この前お兄ちゃんのドラマに出てたでしょ。それから」
「いい加減にしろ」
「じゃあ軽井沢ご馳走様です」
「お前の旦那に言っとけよ。酒を飲むなとは言わない。でも酒を持って帰るのだけはやめてくれ。お前の旦那だって酒ぐらい買える給料をもらってるだろ」
「いいじゃない、お酒の一本や二本。うちの旦那はお兄ちゃんと違って高給取りじゃないんです。薄給なんです薄給。わかる? ちなみに旦那の給料は」
「もういい。薄給亭主を選んだのはお前の責任だ」
「お兄ちゃんさ、早く結婚しなよ。いつまでも一人だなんて空しいわよ」
「余計なお世話だ」
「余計なお世話されなくなったらお兄ちゃん終わりよ。じゃあねバイバイ」
 伊藤はスマホを枕の下に隠した。もう電話には出ない……。数秒後、伊藤は枕の下に隠したスマホを取り出した。一人だけ気になる女がいる。

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