この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
千一夜
第20章 第四夜 線状降水帯 ④

伊藤は別荘に入り、二階の寝室に向かった。伊藤はスマホではなくパソコンを立ち上げて、松原が言う高倉希を検索した。松原が言うように高倉はその世界で有名だったということがわかった。検索上位はすべて高倉希本人、そして発売されているDVDの数がとても多い。
金髪ロングヘア―、高倉は胸も大きくてむっちりした体をしていた。一晩抱くだけの女なら悪くはない。伊藤はそう思った。そして高倉とゆかりを比べている自分に気付いた。気になるのはやはりゆかりだ。
だからこの別荘で抱きたいのは高倉ではなくゆかりだ。残念ながらゆかりは今ここにはいない。
それからちょうど一時間後、松原から電話があった。
「どうでしょうか社長」
「考えさせてくれ。僕は今休暇を楽しんでいる。東京に戻ってから電話をもらえるだろうか?」
「承知しました」
「それから松原さん、一つお願いしたいことがある」
「何でしょう?」
「休日に電話はやめてほしい。あなたが僕の電話番号をどこで手に入れたのかそんなことはどうでもいい。だが、僕の電話番号を知っている人間は、休日に電話をかけてくるようなことはしない。そうみんなに頼んでいるし、社員には命令している」
「社長、申し訳ございませんでした。このようなことがないようこれから気を付けます」
「それじゃあ」
「失礼いたします」
伊藤は大きなため息を一つついた。スマホをベッドの上に放り投げようかと思ったが、伊藤は思い直した。スマホの何も映っていない画面に目を落とした。
鎌倉まで昼飯を食べに行こうか、すると多くの観光客が伊藤の目に浮かんだ。箱根に向かったとしてもおそらく同じだろう。食事のために人気店の長蛇の列に並ぶことは何とか我慢できる、しかし観光客を見るためのドライブだけはしたくない。
伊藤は当初向かう予定だった静岡方面に行くことを決めた。ならば熱海にしよう。もちろん熱海にも多くの観光客はいるが、いくつか知っている隠れ家のような宿でゆっくり温泉に浸かる。誰にも会うことのない自分だけの聖域。
そうと決まれば後は行動するだけ。伊藤がシャワーを浴びに浴室に向かおうとしたとき、またスマホが鳴った。伊藤はうんざりした。スマホを取り上げ画面を見ると知っている女の名前が表示された。
伊藤の表情が一瞬で変わった。
「はい」
「先生……」
嗚咽を堪える篠田燈の声が聞こえたてきた。
金髪ロングヘア―、高倉は胸も大きくてむっちりした体をしていた。一晩抱くだけの女なら悪くはない。伊藤はそう思った。そして高倉とゆかりを比べている自分に気付いた。気になるのはやはりゆかりだ。
だからこの別荘で抱きたいのは高倉ではなくゆかりだ。残念ながらゆかりは今ここにはいない。
それからちょうど一時間後、松原から電話があった。
「どうでしょうか社長」
「考えさせてくれ。僕は今休暇を楽しんでいる。東京に戻ってから電話をもらえるだろうか?」
「承知しました」
「それから松原さん、一つお願いしたいことがある」
「何でしょう?」
「休日に電話はやめてほしい。あなたが僕の電話番号をどこで手に入れたのかそんなことはどうでもいい。だが、僕の電話番号を知っている人間は、休日に電話をかけてくるようなことはしない。そうみんなに頼んでいるし、社員には命令している」
「社長、申し訳ございませんでした。このようなことがないようこれから気を付けます」
「それじゃあ」
「失礼いたします」
伊藤は大きなため息を一つついた。スマホをベッドの上に放り投げようかと思ったが、伊藤は思い直した。スマホの何も映っていない画面に目を落とした。
鎌倉まで昼飯を食べに行こうか、すると多くの観光客が伊藤の目に浮かんだ。箱根に向かったとしてもおそらく同じだろう。食事のために人気店の長蛇の列に並ぶことは何とか我慢できる、しかし観光客を見るためのドライブだけはしたくない。
伊藤は当初向かう予定だった静岡方面に行くことを決めた。ならば熱海にしよう。もちろん熱海にも多くの観光客はいるが、いくつか知っている隠れ家のような宿でゆっくり温泉に浸かる。誰にも会うことのない自分だけの聖域。
そうと決まれば後は行動するだけ。伊藤がシャワーを浴びに浴室に向かおうとしたとき、またスマホが鳴った。伊藤はうんざりした。スマホを取り上げ画面を見ると知っている女の名前が表示された。
伊藤の表情が一瞬で変わった。
「はい」
「先生……」
嗚咽を堪える篠田燈の声が聞こえたてきた。

