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千一夜
第20章 第四夜 線状降水帯 ④

「泣いているのか?」
「……」
「喧嘩でもしたのか?」
「……」
「燈、どうしたんだ?」
「……ちょっと」
「ちょっと、どうしたんだ?」
「先生、今先生の所に行ってもいいですか?」
「構わない。燈は今どこにいるんだ?」
「家です」
「確か中野だったよな。だったらタクシーを拾って葉山まで来なさい」
「葉山? お金が……」
「金なら心配しなくていい。葉山に入ったらまた電話をしてくれ。タクシーの運転手に僕が別荘までの道順を教える」
「いいんですか?」
「構わない。これから熱海に行こうと思っていたんだ。燈が来たら一緒に行こう」
「はい」
「じゃあ待ってるぞ」
「はい」
電話が終わると伊藤は浴室でシャワーを浴びた。シャワーを浴びながら伊藤は燈のことを思った。具体的にはスレンダーな燈の体のこと。乳房とま×こ。そして燈の喘ぎ声。想像するだけで伊藤のペニスは硬くなった。伊藤は硬くなったっペニスだけは念入りに洗った。
トランクスを穿いただけの格好で伊藤は二階に上がった。ビールが飲みたかったが、これから熱海まで車を運転しなければならない。仕方なく伊藤は冷蔵庫から炭酸水を選んでそれを飲んだ。コルビジェに腰かけ、朝買った新聞をもう一度広げた。
一時間後、燈から電話があった。タクシーの運転手に別荘の住所を教える。それから十分ほどして燈が別荘に着いた。
伊藤がタクシーの運転手に料金とチップを渡し終わり、別荘の玄関のドアが閉まると、燈が伊藤に抱き着いて泣き始めた。
燈が使っているシャンプーの匂いが、伊藤の鼻孔を通った。清潔で清純な匂いだった。
「どうしたんだ? 彼氏に浮気でもされたのか?」
伊藤は燈のショートヘアーを撫でながらそう訊ねた。
「……」
燈はこくんと一つ頷いた。
「典型的な売れない役者だ。いつかは売れる、それまで売れないという時間を楽しんでいるバカ役者だな。楽しんでいるつもりの時間はあっという間に過ぎる。四十、五十になってバイトしながらチョイ役でももらえれば御の字。でもそういう役者は一握り、死ぬまで非正規の仕事をしながら役者をやらなければならない。燈、その男とは別れろ。僕のために言っているわけではない、僕は燈のために言っている」
「……」
燈は首を横に振った。売れない役者とそれを支える健気な女。伊藤は燈にばれないようにため息をついた。
「……」
「喧嘩でもしたのか?」
「……」
「燈、どうしたんだ?」
「……ちょっと」
「ちょっと、どうしたんだ?」
「先生、今先生の所に行ってもいいですか?」
「構わない。燈は今どこにいるんだ?」
「家です」
「確か中野だったよな。だったらタクシーを拾って葉山まで来なさい」
「葉山? お金が……」
「金なら心配しなくていい。葉山に入ったらまた電話をしてくれ。タクシーの運転手に僕が別荘までの道順を教える」
「いいんですか?」
「構わない。これから熱海に行こうと思っていたんだ。燈が来たら一緒に行こう」
「はい」
「じゃあ待ってるぞ」
「はい」
電話が終わると伊藤は浴室でシャワーを浴びた。シャワーを浴びながら伊藤は燈のことを思った。具体的にはスレンダーな燈の体のこと。乳房とま×こ。そして燈の喘ぎ声。想像するだけで伊藤のペニスは硬くなった。伊藤は硬くなったっペニスだけは念入りに洗った。
トランクスを穿いただけの格好で伊藤は二階に上がった。ビールが飲みたかったが、これから熱海まで車を運転しなければならない。仕方なく伊藤は冷蔵庫から炭酸水を選んでそれを飲んだ。コルビジェに腰かけ、朝買った新聞をもう一度広げた。
一時間後、燈から電話があった。タクシーの運転手に別荘の住所を教える。それから十分ほどして燈が別荘に着いた。
伊藤がタクシーの運転手に料金とチップを渡し終わり、別荘の玄関のドアが閉まると、燈が伊藤に抱き着いて泣き始めた。
燈が使っているシャンプーの匂いが、伊藤の鼻孔を通った。清潔で清純な匂いだった。
「どうしたんだ? 彼氏に浮気でもされたのか?」
伊藤は燈のショートヘアーを撫でながらそう訊ねた。
「……」
燈はこくんと一つ頷いた。
「典型的な売れない役者だ。いつかは売れる、それまで売れないという時間を楽しんでいるバカ役者だな。楽しんでいるつもりの時間はあっという間に過ぎる。四十、五十になってバイトしながらチョイ役でももらえれば御の字。でもそういう役者は一握り、死ぬまで非正規の仕事をしながら役者をやらなければならない。燈、その男とは別れろ。僕のために言っているわけではない、僕は燈のために言っている」
「……」
燈は首を横に振った。売れない役者とそれを支える健気な女。伊藤は燈にばれないようにため息をついた。

