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千一夜
第21章 第四夜 線状降水帯 ⑤
「伊藤、まだ老け込む年じゃないでしょ。いいものを作りなさいよ、女なんか忘れてさ」
「女を忘れるなんて僕には無理な話だ。ついでに言えば酒も車も音楽も」
「ふん。伊藤、燈を遊んで捨てたら許さないから。それだけは覚えておいて」
「わかってる」
「じゃあ、明後日定時に燈を私の事務所に」
「ああ」
 今度こそ伊藤はスマホの電源を切った。
「先生、すみません」
「燈は何も悪くない。もし香苗に怒られたなら、それは僕の分まで燈が香苗から叱られたということだ。謝るのは僕だ。燈、申し訳ない」
「いいんです。でも先生、一つ訊いていいですか?」
「何?」
「先生と香苗さんはどういう関係なんですか」
 燈は伊藤に疑問をぶつけた。
「大学時代、僕と香苗は一緒に芝居を作っていた。僕の作る芝居に注文をつけることができたのはあいつだけだった。香苗は僕の書いた本の台詞の一言一言にも文句を言ってたよ。いやな奴だったけど、香苗には僕以上に才能があった」
「それじゃあどうして香苗さんはスタイリストになったんですか?」
「香苗にはそういうセンスがあったんだろう。大学のときも一人変わった服を着てたし、人の服のセンスをあれこれ言ってたからな」
「そうだったんですか」
「ああ」
 邪魔が入った。伊藤と燈の盛り上がっていった炎が消えてしまった。伊藤はベッドの上で仰向けになって、両手を組んでそこに頭を乗せている。燈は伊藤の胸に顔をつけていた。燈の指は伊藤の乳首を弄ったりしていない。
「香苗さん、先生のことクズって言うけど、先生の作るドラマや映画は欠かさず見ているんです」
「実はずっと香苗のことを誘っているんだ」
「誘っている?」
「僕の会社に誘っているということ。でも頭を縦に振らないんだよ。肩書が僕の下になるのが我慢できないとさ」
「肩書?」
「あいつもバカな女だ。肩書なんてこの世界じゃあってないようなものだろ。仮に香苗の肩書が僕より下でも、きっとあいつは僕の前では偉そうな態度をとるに決まっているんだ。それでいいんだよ。それでいいのにあいつは」
「先生、香苗さんのこと好きなんですか?」
「冗談じゃない。仕事だからあいつと付き合えるんだ。香苗と飯食っても美味くないし、酒がまずくなる。香苗とセックスすることなんて一度も考えたことがない」
「本当?」
「本当だ。香苗は僕を唯一不能にすることができる女だ」
「不能……」
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