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千一夜
第22章 第四夜 線状降水帯 ⑥
「私、大学に通っていたとき、伊藤先生がOHさんの小説の大ファンで、OHさんの作品はほとんど読破したという記事を読んだことがあるんですが」
「間違ってるね。ほとんどではなくすべて読んだ、と僕は答えたと思うが」
「本当ですか?」
「もちろん本当だ。僕はOH先生の大ファンだ」
 伊藤は高校時代、OHの作品を読み漁っていた。そしてOHのファンだということも嘘ではない。
「それでは伊藤先生が作るドラマや映画にOH先生の影響はあったのでしょうか?」
「どんなクリエーターでも誰かの影響は必ず受けているよ。だからOH先生の小説が、僕の芝居を刺激していることは間違いないね」
「そうだったんですね」
「そうだったんですね、か」
「……伊藤先生、何か?」
「いや、特に何でもない」
「伊藤先生も私も、そしてOH先生もW大学出身です。このことを縁と言うんですね」
「ははは、どうだろうね」
 芝居ではいろいろな賞を受賞している伊藤だったが、憧れのOHが冠になっている賞は本当に欲しいと思っている。
 A賞は受賞できなかったが、だからと言って伊藤が落ち込むことはなかった。だが、OH賞だけはどうしても受賞したい。伊藤は久しぶりに性欲以外の欲に体が燃えてくるようだった。
 伊藤のスマホが着信音を鳴らした。
「伊藤先生、すみません私ちょっと」
 関根はそう言うと、気を利かして個室から出ていった。
「はい、伊藤ですが」
「お久しぶりです。松原です」
「松原さん……ああ」
「社長、今お時間よろしいでしょうか?」
 週末の金曜日の午後九時。まだ伊藤の休日にはまだ三時間ある。
「構いませんよ、どうぞ」
「例のお話の続きなんですが」
「例の話……確か、どこかの女優さんのことだよね」
 松原のことはわかるが、松原が何を自分に話したのか、伊藤は忘れていた。
「まぁ……女優ではないですね。ジュニアアイドルだった子です」
「ジュニアアイドル……」
 そう言えば松原の言った名前をパソコンで検索した覚えがある。残念ながら名前は忘れてしまったが。
「高倉希です」
「高倉希」
 伊藤は松原の言葉を復唱した。
「それで」
「松原さん、もう少し時間をくれないか。正直言って」
「社長、話を遮って申し訳ございません。今日は社長に提案させていただきたくお電話した次第です」
「提案?」
「はい、提案でございます」
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