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千一夜
第22章 第四夜 線状降水帯 ⑥

伊藤は希をテストしてみようと思った。希の答えが自分の望むものなら契約する。だが、違ったものだったら玄関にあるキャリーケースと共に希には出て行っていってもらう。
「最後の質問だ」
「はい」
「特技に料理って書いてあるけど、君が一番得意な料理って何?」
「一番得意な料理ですか?」
「そう」
「茶碗蒸しです」
即答だった。
「茶碗蒸し……か」
「はい」
茶碗蒸しという言葉に伊東の心は動いた。希がもしパスタや焼きそば、ハンバーグなんて言ったら伊藤は希にタクシー代を渡そうと思っていた(もちろん伊藤はパスタも焼きそばもハンバーグも好きだ)。
だが実際に希の作った茶碗蒸しを食べてみないとわからない。
「だったら明日作ってくれる?」
「明日ですか?」
「そう。僕はここで料理を一切しない。だから今ここには料理するためのキッチングッズが一つもないんだ。明日それらを買う。君が料理に使うものなら何でも買うから」
伊藤の食事はすべて外食だ。自分の部屋で伊藤は酒を飲むが、酒のつまみはすべてレジデンスにあるホテルから届けてもらっている。
伊藤は包丁を持ったことがない。せいぜい学生時代アパートで湯を沸かし、その湯を注いでカップ麺を食べたことくらいだ。そして学生時代、伊藤の食事をアパートで作っていたの当時の恋人はるかだった。
「わかりました。がんばります」
「ところでどうして茶わん蒸しが得意なんだ?」
「お母さんから料理は一通り教えてもらいました。その中でもお母さんが作る茶わん蒸しは絶品です」
「なるほど」
「……」
「試験は明日。タクシーを呼ぶから少し待っててくれないか」
「あの」
「何?」
「今日ここに泊めてもらうことはできませんか?」
「構わないよ。でもわかるよね? もし君が今日ここに泊まれば。間違いなく君は僕に犯される。そして明日の試験に不合格なら、君は僕に抱かれただけで帰ることになる。それでいいの?」
「よくないけど……いいです」
「よくないけど、いいか」
伊藤の脳裏に希が持ってきたキャリーケースが浮かんだ。きっとあの中には希の着替えなどが入っているのだろう。
「ダメですか?」
「いや、いいよ」
「ありがとうございます」
希はにこりと笑ってそう言った。
「疲れただろ。シャワー浴びてきなさい」
「シャワー、一緒だとダメですか?」
「一緒?」
「はい」
「最後の質問だ」
「はい」
「特技に料理って書いてあるけど、君が一番得意な料理って何?」
「一番得意な料理ですか?」
「そう」
「茶碗蒸しです」
即答だった。
「茶碗蒸し……か」
「はい」
茶碗蒸しという言葉に伊東の心は動いた。希がもしパスタや焼きそば、ハンバーグなんて言ったら伊藤は希にタクシー代を渡そうと思っていた(もちろん伊藤はパスタも焼きそばもハンバーグも好きだ)。
だが実際に希の作った茶碗蒸しを食べてみないとわからない。
「だったら明日作ってくれる?」
「明日ですか?」
「そう。僕はここで料理を一切しない。だから今ここには料理するためのキッチングッズが一つもないんだ。明日それらを買う。君が料理に使うものなら何でも買うから」
伊藤の食事はすべて外食だ。自分の部屋で伊藤は酒を飲むが、酒のつまみはすべてレジデンスにあるホテルから届けてもらっている。
伊藤は包丁を持ったことがない。せいぜい学生時代アパートで湯を沸かし、その湯を注いでカップ麺を食べたことくらいだ。そして学生時代、伊藤の食事をアパートで作っていたの当時の恋人はるかだった。
「わかりました。がんばります」
「ところでどうして茶わん蒸しが得意なんだ?」
「お母さんから料理は一通り教えてもらいました。その中でもお母さんが作る茶わん蒸しは絶品です」
「なるほど」
「……」
「試験は明日。タクシーを呼ぶから少し待っててくれないか」
「あの」
「何?」
「今日ここに泊めてもらうことはできませんか?」
「構わないよ。でもわかるよね? もし君が今日ここに泊まれば。間違いなく君は僕に犯される。そして明日の試験に不合格なら、君は僕に抱かれただけで帰ることになる。それでいいの?」
「よくないけど……いいです」
「よくないけど、いいか」
伊藤の脳裏に希が持ってきたキャリーケースが浮かんだ。きっとあの中には希の着替えなどが入っているのだろう。
「ダメですか?」
「いや、いいよ」
「ありがとうございます」
希はにこりと笑ってそう言った。
「疲れただろ。シャワー浴びてきなさい」
「シャワー、一緒だとダメですか?」
「一緒?」
「はい」

