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千一夜
第24章 第四夜 線状降水帯 ⑧
 現場から身を引いても、伊藤は制作された作品の一つ一つに目を通さなければならなかった。伊藤が出なければならない会議も多く、業務提携したアメリカの会社との間でもほぼ毎日ミーティングが行われた。おまけに上場のための準備で伊藤は毎日の仕事に忙殺されていた。
 平日、両親と希のいる部屋に帰っても伊藤は何度も携帯で呼び出された。そのせいで伊藤は平日だけホテル暮らしを始めた。希も両親もそれには理解を示した。週末だけ希と両親を温泉に連れて行けば、希も伊藤の両親も文句は言わなかった。
 そんなときだった。会社で小さな問題が起こったのだ。
 上場のために大手銀行から引き抜いた五十代の高谷という男が社長室を訊ねてきた。高谷は伊藤にこう言ったのだ「サポートしているチームと伊藤の会社の上場チームの折り合いが良くない」と。それから伊藤は高谷の愚痴をたっぷり聞かされた。
 伊藤は思った。プライドの高い高谷は自分の思い通りに進まないことをサポートに入っている証券会社のせいにしている。多分、いや間違いなく証券会社側に主導権を握られている。高谷はそれが気に食わないのだ。
 伊藤の仕事がまた一つ増えた。主幹事証券会社から派遣されているチームと伊藤の会社のチームの二者の間に入らなければならなくなったのだ。映像を作っている会社が上場を手伝うプロのチームに勝てるわけがない。伊藤は高谷との話が終わると大きくため息を一つついた。
 引き抜かれた高谷の自尊心を傷つけてはならない。高谷には上場後も会社に残ってもらわなければならないのだ。主幹事証券会社と自分の会社が対立するようなことにでもなれば、上場のための計画を大きく見直さなければならなくなる。今の時代、スピードがすべてだ。失速は、すなわち信用を失うということ。どうしてもそれだけは避けなければならない。伊藤はもう一度大きなため息をついた。
 伊藤は主幹事証券会社の派遣チームと伊藤の会社の上場準備のメンバーを集めて食事会を設けた。食事会の前に進捗の状況を伊藤は両チームから報告を受けることにした。
 会議がまた一つ増える。盛り上がることのない食事会も伊藤の心を暗くした。ただ、今はそれを我慢しなければならない。
 やはり自分は映像を作る側の人間だ。経営なんて自分には似合わない。改めて伊藤はそう思った。
 伊藤は両方のチームが待つ会議室のドアを開けた。
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