この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
千一夜
第24章 第四夜 線状降水帯 ⑧
 伊藤は裕子に顔を向けた。
「上場させることができたオーナー社長って一見ワンマンに見えるんだけど全然違うの」
「僕はワンマンなんかじゃないぞ」
「そう、その通り。でも外から眺めるとそういう風に見えるわけ」
「それで?」
「共通点は、そのすべての人たちが大胆であったということ」
「大胆な社長なんて穿いて捨てるほどいる」
「話は最後まで聞いて。大胆だけど……」
「大胆だけど……」
 伊藤は裕子の言葉を繰り返した。
「大胆だけど、ものずごく繊細なの」
「大胆かつ繊細というやつか」
「そう。繊細な社長は社員をよく見ているわ。そして社員の意見もきちんと聞く。自分が間違っていると気づけばプライドなんか捨てて積極的に社員の意見を取り入れる。つまり柔軟性があるわけね」
「柔軟性ね」
「そこで私は伊藤君の会社の本当の姿を知るためにある会議にこっそりと出たの」
「それスパイ行為だな」
「もちろん幹事証券には守秘義務があるから心配しないで」
「それで」
「音楽映像の制作会議だったみたい。実はその会議に伊藤君もいたのよ。途中から会議を覗いたって感じだったけど、私にとっては最高のシチュエーション」
「僕にとっては最悪のシチュエーションだ。会議は面白かったかい?」
「面白かったわ。まず、途中から会議室に入って来た伊藤君に頭を下げたのは一人だけ。おそらく会議室の中で一番偉い人だと思うわ」
「海野だな。海野雅也」
「その海野さん以外は、会議室に入って来た伊藤君を誰だこの人って感じで見ていたのよ」
 社内で伊藤にあいさつするのは役職についている人間くらいだ。
「社長も軽く見られたもんだ」
「伊藤君を軽く見ているわけじゃないわよ。みんな知ってるの。挨拶なんかよりいい仕事をしろって伊藤君が言っているのが」
「僕はそんなこと言った覚えはないが」
「伊藤君の生き方そのものがそうでしょ。挨拶より仕事」
「ふん」
「それぞれが自分の意見を堂々と言っていたわ。自分のアイデアが一番だっていう感じで」
「一番じゃなきゃ困る」
「そう、みんな自分が一番だと思っているの。するとだんだん雰囲気が悪くなっていったの。だって誰も一歩も引かないんですもの」
「一番だと思うなら引く必要はない」
「ふふふ」
「何が可笑しいんだ?」
「険悪な場を伊藤君がどうするのか、私はそれからずっと伊藤君を見ていたわ」
「それで?」
/354ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ