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千一夜
第24章 第四夜 線状降水帯 ⑧

「ねぇ伊藤君、未来の伊藤君と私の旅の話をしてみて」
「こんなのはどうだ?」
伊藤はそう切り出した。
「こんなのって?」
「仕事の関係で僕はいろいろな国に行った。でも北欧だけはまだ行ったことがないんだ」
「北欧?」
「そう、北欧だ。フィンランドは一年で二百日オーロラ―が見られるみたいなんだ」
「オーロラ?」
「オーロラだ。クリスマスにフィンランドに行ってオーロラを見る。橘には悪いが、フィンランドでレコード店巡りをしたい」
「わざわざフィンランドまで行ってレコード店巡り?」
「わざわざフィンランドに行くのには理由がある。店に並んでいるレコードを見れば北欧のジャズに対する熱量がわかる。まぁジャズが好きな奴は世界中どこにでもいるけどな」
「高校時代の生徒会長みたい」
「そのとき橘は副会長になるんだ。どうだ? 悪くないだろ」
「伊藤君とならどこにでも行ける。私は伊藤君と一緒にいたい」
「なら決まりだな。上場して僕が引退した年のクリスマスに僕は橘とフィンランドに行く」
「クリスマスは奥さんと一緒でしょ?」
「橘、僕は誰とも結婚などしない。お前ならわかるだろ」
「でも、伊藤君の子供……」
「自分の子供には責任を持つ。当たり前だ。でも僕は結婚しない」
伊藤はきっぱりとそう言った。
「……」
「橘、僕は正真正銘のクズだ。お前とこうしていながら、他の女を切ることができない。それにまだ生まれていないが、僕は僕の子供のことを気にしている。こんなダメダメなクズ野郎でもお前はいいのか?」
「ふふふ」
「何だよ?」
「伊藤君の言う通りよ。私以外の女と寝る伊藤君なんて最低。最低でクズ。でも伊藤君は私と寝るときは私だけのことを思ってくれる。それだけでいいって思っちゃうのよ。ずるいわよ伊東君は」
「否定はしない。僕はずるい男だ」
「フィンランドに行くならお願いがあるわ」
「何でも言えよ」
「ヘルシンキ大聖堂に行きたいの。構わない?」
「もちろん」
「それから……」
「それから……それから何だよ?」
「伊藤君とポルヴォーの街を歩きたい」
「ポルヴォー?」
「そう、ポルヴォー。フィンランドで二番目に古い街」
「さすが橘だ。フィンランドで二番目に古い街を知ってるんだからな」
「そんなことないわよ」
「こんなのはどうだ?」
伊藤はそう切り出した。
「こんなのって?」
「仕事の関係で僕はいろいろな国に行った。でも北欧だけはまだ行ったことがないんだ」
「北欧?」
「そう、北欧だ。フィンランドは一年で二百日オーロラ―が見られるみたいなんだ」
「オーロラ?」
「オーロラだ。クリスマスにフィンランドに行ってオーロラを見る。橘には悪いが、フィンランドでレコード店巡りをしたい」
「わざわざフィンランドまで行ってレコード店巡り?」
「わざわざフィンランドに行くのには理由がある。店に並んでいるレコードを見れば北欧のジャズに対する熱量がわかる。まぁジャズが好きな奴は世界中どこにでもいるけどな」
「高校時代の生徒会長みたい」
「そのとき橘は副会長になるんだ。どうだ? 悪くないだろ」
「伊藤君とならどこにでも行ける。私は伊藤君と一緒にいたい」
「なら決まりだな。上場して僕が引退した年のクリスマスに僕は橘とフィンランドに行く」
「クリスマスは奥さんと一緒でしょ?」
「橘、僕は誰とも結婚などしない。お前ならわかるだろ」
「でも、伊藤君の子供……」
「自分の子供には責任を持つ。当たり前だ。でも僕は結婚しない」
伊藤はきっぱりとそう言った。
「……」
「橘、僕は正真正銘のクズだ。お前とこうしていながら、他の女を切ることができない。それにまだ生まれていないが、僕は僕の子供のことを気にしている。こんなダメダメなクズ野郎でもお前はいいのか?」
「ふふふ」
「何だよ?」
「伊藤君の言う通りよ。私以外の女と寝る伊藤君なんて最低。最低でクズ。でも伊藤君は私と寝るときは私だけのことを思ってくれる。それだけでいいって思っちゃうのよ。ずるいわよ伊東君は」
「否定はしない。僕はずるい男だ」
「フィンランドに行くならお願いがあるわ」
「何でも言えよ」
「ヘルシンキ大聖堂に行きたいの。構わない?」
「もちろん」
「それから……」
「それから……それから何だよ?」
「伊藤君とポルヴォーの街を歩きたい」
「ポルヴォー?」
「そう、ポルヴォー。フィンランドで二番目に古い街」
「さすが橘だ。フィンランドで二番目に古い街を知ってるんだからな」
「そんなことないわよ」

