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千一夜
第25章 第四夜 線状降水帯 ⑨
 上唇がほんの少しだけめくれ上がった裕子の口で伊藤の乳首はしゃぶらている。裕子の右手は伊藤の肉棒から離れない。伊藤の肉棒の硬さを確認しながら裕子の右手は動く。ときに速く、ときに遅く。そしてときに強く、ときに弱く。
 裕子の目はベッドの上で全裸で大の字になっている伊藤の顔に向けられる。獲物をしとめた卑猥な目が伊藤の様子を伺う。伊藤は裕子の獣に変身した裕子の目を知らない。伊藤は目を閉じて裕子の奉仕を受けている。
 女の性欲、ときにそれは男のそれを超えるものになる。裕子は伊藤の乳首をしゃぶり、左手でつまんだりした。裕子は伊藤が必死に恍惚から逃れようとする表情に満足した。女は男をいかせなければならない。抱き合った瞬間から男が女の中に精液を放出するまで。女は男をいかせ続ける。
 悪戯心が裕子に芽生えた。伊藤だってそれを聞きたいに違いない。だから伊藤はあのときしつこく自分に訊いてきたのだ。だったら伊藤にすべてを教えてあげたい。裕子はそう思った。
 それを聞いた後の伊藤の反応を見てみたい。いつも王様だった(もちろん今でも)伊藤は、それを聞いた後もお王様でいられるだろうか? うろたえるかもしれないし、せのせいで伊藤の顔が歪むかもしれない。
 裕子はそんな伊藤を見て見たかった。男のプライドが傷つくのだ。ひょっとしたら硬くなってる伊藤の肉棒が萎えるかもしれない。でも仕掛けてみる。裕子は厭らしい目を伊藤にやりながらそう考えた。
「伊藤君」
「……」
 伊藤は目を閉じたままだった。
「伊藤君」
「何だ?」
「聞きたい?」
「何のことだ?」
「あれ」
「あれって何だよ?」
「伊藤君がさっき私に訊ねたでしょ」
「訊ねた? 何だったかな」
「とぼけないでよ」
「とぼけてないよ。はっきり言えよ」
「私のエッチのこと」
「橘のエッチ? 何だよそれ?」
「別れた夫のこと」
「ああ、そのことか。だったら是非聞かせてくれ。橘の前の旦那のエッチはものすごく気になる。どんなふうにして橘をいかせてたのか、橘はそれに満足していたのか、橘の口から聞きたいね」
「ふふふ」
「何だよ、そんなにおかしいことなのか?」
「覚悟してね」
「覚悟が必要なのか?」
「多分」
「わかった」
「伊藤君を虐めることになるけど、それでもいいの?」
「構わない。僕はたくさんの人間から虐められてるよ」
「それじゃあ言うわね」
「ああ」
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