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千一夜
第25章 第四夜 線状降水帯 ⑨
 伊藤を虐めてやる。高校時代には思ってもみなかったことが裕子の心に芽生えた。本当の事を伊藤に伝える。脚色なしのリアルな話。ずっとずっと憧れていた伊藤の顔を見てみたい。泣くことはないだろうが、笑うこともないだろう。
「……」
「前の旦那のセックスよかったのか?」
 先手を打たれたと裕子は思った。
「伊藤君はどう思うの?」
「橘の口ぶりからおおよそ予想が付く。橘はエッチが下手な男のことなんて言わない。だろ?」
「結婚しようと思った理由の一つは間違いなくそれよ。前の旦那、私がとろけるまで私を抱いたわ」
「とろけるように抱いていた……」
「悔しい?」
「悔しくない男がいるのか。僕は嫉妬するね。橘をとろけるまで抱いていた男にむちゃくちゃジェラシーを感じる。僕の橘をとろけるまで抱いたんだ。ぶん殴ってやりたいよ」
「本当?」
「本当だ」
「それに」
「それに大きかったんだろ?」
 伊藤は自分が言うことがわかっている。裕子はそう感じた。
「伊藤君、そんなことどうしてわかるの?」
「簡単だよ。スケベが好きな男は大体ペニスが大きい。まぁ例外はあるだろうけどね」
「伊藤君は大きい方?」
「誰かのペニスと比べたことなんてないね」
「でも伊藤君はスケベでしょ?」
「だから大きい?」
「そう」
「僕のペニスが例外かもしれない」
「ふふふ」
「何が可笑しんだ?」
「伊藤君を虐めてやろうと思ったけど、やっぱり伊藤君は王様よ」
「今、その王様が虐められようとしていたわけだ」
「王様をいたぶってやるわ」
「お手柔らかに」
 裕子は硬いままの伊藤の肉棒をしごき始めた。
「前の旦那のおちんちんものずごく大きかったの。ふふふ、もちろん伊藤君のおちんちんよりも大きかったわ。セックスが初めてじゃなかったけど、あんなにでかいおちんちんが自分の中に入ってくるなんてあり得ないと思った」
「でも入った」
「そう、入ったの。彼、私のあそこがびしょびしょになるまでいかせ続けたのよ」
「カット」
「何よ」
「あそこなんて台詞はあり得ない。橘の旦那だったやつは『あそこ』じゃ許さなかったはずだ」
「あそこでいいでしょ」
「ダメだね。橘と旦那のセックスは芝居じゃないんだ。はっきり言えよ」
「伊藤君、それを聞いてどうするの?」
「間違いなく興奮する」
「ふふふ」
「プリーズ」
「おまんこ」 
 裕子はそう言って伊藤の肉棒を握った。
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