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千一夜
第26章 第四夜 線状降水帯  ➉
 ヌルヌルとした地面(そもそもそれが地面だとは断言はできない)が動き出した。動いた、というよりゴルフボールくらいの大きさの玉が、伊藤が寝かされている地面の下に何百個何千個敷き詰められていて、それがくるくると回り始めたと言った方がいい。
 不快感を覚えていた伊藤だったが、背中を虫のようなものが這いまわるような感じに伊藤は闇の中で顔をしかめた。気分が悪い、もう我慢できない。伊藤がそう思ったとき、伊藤は更に驚かされたのだ。
 何かが伊藤の足首を掴んだのだ。
「おい!やめろ!」
 びっくりして伊藤は声を上げた。もちろん伊藤の声は闇の中では響かない。
 何かは、人間ではない。自分の足首を掴んでいるのは何なのだ? 伊藤の不安はさらに強くなっていった。
 伊藤は、息を吸い息を吐くことが難しくなっていった。それは闇の中の空気が薄いからではない。伊藤が恐怖を感じることはなかったが、伊藤の中で不安が重なると、それらは何かの意志を含んだ物質に変わり、伊藤の心臓に纏わりついてきたのだ。
「助けてくれ!」
 伊藤は誰かに……何かに救いを求めた。
 伊藤に救いはなかった。それどころか伊藤は恐怖のどん底に落とされる。
「あああおおお」
 伊藤の叫びがようやく闇の中で響いた。
 突如伊藤の前に青い大きな蛙が現れたのだ。その蛙の口から蛙の舌がチョロチョロと出て、伊藤の顔を舐めようとするのだ。
「おええ」
 伊藤は胃液を大量に吐いた。伊藤が顔を背け、目を瞑っても蛙は消えなかった。蛙は執拗に伊藤の顔を舐めようとした。
 恐怖はまだ続く。伊藤の足首を掴まえていた何かが、伊藤の足首を掴んだまま伊藤を引きずり出したのだ。
 目を開けても目を閉じても青い蛙は消えない。そしてぐいぐいと足首を掴んでいる何かによって引っ張られている。
 まさかとは思うが、自分の足首を掴んでいるのは……。伊藤は仰向けになりながら、そして青い蛙に舐められるのを避けながら恐る恐る自分の足元を見た。
「おげー!」
 伊藤の絶叫が初めて闇の中で轟いた。
 伊藤の足首を掴んで伊藤を引きずっていたのは、別の青い蛙二匹だった。
 間違いない。自分は青い蛙たちに食われてしまう。伊藤は闇の世界で失禁した。この闇の世界には逃げ場などない。
 冗談じゃない、蛙たちに食われるなんて真っ平御免だ。これは夢だ。どうか夢であってくれ。伊藤はそう願った。
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