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千一夜
第26章 第四夜 線状降水帯  ➉
 ゆかりの誘いに乗ってはいけないと伊藤の中でずっと警報が鳴っている。香苗が怖いからではない。「パパ」と呼ばれているからではないし、間違いなく俳優として成功するだろうゆかりに遠慮しているからでもない。
 この女と体で繋がるなと、伊藤の中にいる何かがそう叫んでいるのだ。
 悲しいかな伊藤の男の部分が、伊藤の中から出ている警告を無視している。伊藤は自分の性欲を制御できないのだ。
 ゆかりは伊藤の乳首をどう弄れば伊藤が感じるのかを熟知しているようだった。だから伊藤はゆかりにこう言ったのだ。
「お前はこういうことが好きなのか?」
「……」
 ゆかりは笑っているだけで伊藤の問いには答えない。
 伊藤はまずいと思った。このままで終わるわけがない。伊藤がそう思ったとき、ゆかりの手が伊藤の下腹部の方に向かうのが伊藤にはわかった。
「おいよせ!やめろ!このこと香苗が知ってるのか? お前は香苗が怖くないのか?」
「パパ」
「だから僕はお前のパパなんかじゃない。こんなことをしたいなら他の誰かを探せ!そしてそいつをパパと呼べ!」
「……」
 ゆかりは伊藤の陰毛をなで始めた。その手はやがて自分の男根にやって来る。それを防ぐ術が伊藤にはない。
「ここまでにしておけ!この先はお前がお前の首を絞めることになる。香苗がお前を使わなくなったら、お前には芝居の世界では生きていけない。わかったか!」
「パパ」
 ゆかりは伊藤の話には耳を貸さなかった。それからゆかりは伊藤の乳首を舐め始めた。そして伊藤の肉棒がゆかりに手で掴まれた。
 言葉ではゆかりにやめろと言っていた伊藤だったが、伊藤の肉棒は硬くなろうとしていた。
「頼むからやめてくれ……」
 力のない伊藤の声だった。ゆかりに懇願してもゆかりは止めない。やめて欲しい……、そう思いながら次の展開を待っている自分がいる。伊藤はそんな自分を認めないわけにはいかなかった。 
 ゆかりは舌を使って伊藤の乳首を丁寧に舐めた。掴んでいる伊藤の肉棒がさらに硬くなるように、ゆかりは伊藤の肉棒を掴んでいる手を動かした。
 金縛りにあっているのに伊藤の体はひくひくと体が動いた。興奮のせいで伊藤の心臓の鼓動が大きくなっていった。
 伊藤は観念した。ゆかりの性的奉仕に耐える自信などない。むしろもっと気持ちよくしてくれと伊藤の男根は要求していたのだ。
 伊藤は負けを認めた。
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