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千一夜
第27章 第四夜 線状降水帯  ⑪
「忙しくなるな」
「ごめんなさい。伊藤君、会長を一期務めてリタイヤするつもりだったでしょ。おまけに伊藤君の舞台が好評で日本だけでなく世界からもたくさんの関係者が見に来てるらしいじゃない。伊藤君は大絶賛されるし……、その芝居の上映権の交渉も大変な時期なのに……本当にごめんなさい」
「絶賛されてるのは芝居だ。僕じゃない」
「謙遜もほどほどにしておかないと嫌味になるわよ。本を書いたのは伊藤君。それだけじゃないわ、演出と監督まで全部伊藤君が一人でやったじゃない。みんな言ってるわ、伊藤は天才だって」
「じゃあ僕はまだまだだ」
「天才じゃだめなの?」
「天才って何だよ」
「伊藤君が誰も近づけない領域にいると言うことよ。それでもまだ何か物足らないの?」
「やりたいことはたくさんある。僕なんかまだまだだ」
「本当嫌味な人!」
「痛っ!」
 裕子に肉棒を握られた伊藤が思わず声を上げた。
 伊藤は自分が体験したことを本に書いた。闇の世界と光の世界の話。
 光に乗っていた男が闇の世界に突然落ちてしまう。闇の世界で男は青い蛙に会う。男は闇の世界の番人である青蛙に自分を楽しませる話を五つ話せと言われる。一つでもつまらない話をしたら闇の世界で永遠に一人で暮らさなければならない。五つの話すべてが青蛙を楽しませたならもう一度光に乗せてやると男は言われる。
 男は最初音楽の話を始めた。それから車の話、三つ目は酒の話。四つ目の女の話のとき青蛙は涎を垂らして男の話に耳を傾けていた。
 最後に芝居の話をするつもりだったが、青蛙には芝居の話はもったいないと思った男は、急遽五つ目の話として自分自身のことについて話し始めたのだ。
 音楽を聴きながら酒を飲む。自由に車を走らせ、やりたいときに好きな女を抱く。男は自分の生きてきた人生に自信があった。手に入れたいものはすべて手に入れた。愉しみたいものはすべて愉しんだ。自分は成功者だという誇りが男にはあったのだ。だから男は堂々と自分自身の話を青蛙に披露した。
 ところが……。
「はぁ」
 青い蛙は深くため息をついた。そしてこう続ける。
「その話のどこがおもしろいんだ? あーお前にはとことん失望したよ。お前にはこの闇の世界ですら生きていく価値がない。泣きたくなるくらいお前はつまらない男だな。はぁ」
 青い蛙はそこで消える。
 男は……。
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