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千一夜
第28章 第五夜 線状降水帯Ⅱ ①

その夜、伊藤の携帯を鳴らしたのは三人の女だった。三人の女は、伊藤のルールを無視して伊藤の休日の夜を邪魔した。
「伊藤は私の才能が怖いの?」
香苗は伊藤のことを呼び捨てにできる唯一の人間だ。
「才能だけじゃない。僕は香苗のすべてが怖い」
「ふん」
「チャンスだろ?」
「どういう意味?」
「復讐のチャンス」
「あんなクソどもに復讐する価値なんてないわ。伊藤ならわかるでしょ? 私の方があの組織を見限ったのよ。しっぺ返しは大きくなるわよ。地位も名誉も全部剥ぎ取ってやるわ。丸裸にされた醜いくそジジイを相手にする女はもういない。女を都合のいい上納品のように扱ってたやつらをすべて追い出してやる。この業界に近づけないようにしてやる。そうなれば馴染みのキャバクラも出禁になるんじゃないの」
「ざまぁみろ……か」
「伊藤も注意しておくことね。伊藤も女にはだらしがないから」
「僕は紳士だ」
「アホ」
数秒空白。
「香苗、必ず二年で帰って来てくれ」
「弱気な中年なんて魅力ないわよ。伊藤は王様でなきゃダメよ。舞台の成功おめでとう。悔しいけど久しぶりに見た最高の芝居だったわ。あんな話、よく書けたわね?」
「アインシュタインのように僕も光に乗ったんだ」
伊藤は真面目にそう言った。
「……ふふふ。伊藤、最高のジョークよ。ふふふ」
「……」
本当の話だと言おうとしたが、伊藤はその言葉をのんだ。
「伊藤、この勝負に負けたら伊藤はどうなるの?」
「自分が作った会社から出ていくことになる」
「それでいいの?」
「構わない」
「格好つけてない?」
「言っただろ、僕は紳士だ」
「サクラのくそジジイ共ものそうだけど、自動車屋のおっさんたちもどうして自分のポジションに恋々とするのか私にはわからないわ。伊藤はさすがよ。若い才能をどんどん育てる。そのために身を引くことも辞さないなんて格好良過ぎるじゃない」
「自動車屋のおっさんは差別用語になるかもな」
「あらそう? 本当は社員のことなんかよりも自分のことしか考えていない生ける屍って言ったやりたかったんだけど」
「香苗、これからそういうことは心の中だけで叫べ。香苗はサクラを変えようとしている救世主なんだ。どんなやつらが香苗の傍で耳を澄ましているのかわからない。言葉で足元を掬われるなんてバカバカしい」
「了解よ、伊藤社長」
「頼んだ、香苗」
「ところで伊藤」
「伊藤は私の才能が怖いの?」
香苗は伊藤のことを呼び捨てにできる唯一の人間だ。
「才能だけじゃない。僕は香苗のすべてが怖い」
「ふん」
「チャンスだろ?」
「どういう意味?」
「復讐のチャンス」
「あんなクソどもに復讐する価値なんてないわ。伊藤ならわかるでしょ? 私の方があの組織を見限ったのよ。しっぺ返しは大きくなるわよ。地位も名誉も全部剥ぎ取ってやるわ。丸裸にされた醜いくそジジイを相手にする女はもういない。女を都合のいい上納品のように扱ってたやつらをすべて追い出してやる。この業界に近づけないようにしてやる。そうなれば馴染みのキャバクラも出禁になるんじゃないの」
「ざまぁみろ……か」
「伊藤も注意しておくことね。伊藤も女にはだらしがないから」
「僕は紳士だ」
「アホ」
数秒空白。
「香苗、必ず二年で帰って来てくれ」
「弱気な中年なんて魅力ないわよ。伊藤は王様でなきゃダメよ。舞台の成功おめでとう。悔しいけど久しぶりに見た最高の芝居だったわ。あんな話、よく書けたわね?」
「アインシュタインのように僕も光に乗ったんだ」
伊藤は真面目にそう言った。
「……ふふふ。伊藤、最高のジョークよ。ふふふ」
「……」
本当の話だと言おうとしたが、伊藤はその言葉をのんだ。
「伊藤、この勝負に負けたら伊藤はどうなるの?」
「自分が作った会社から出ていくことになる」
「それでいいの?」
「構わない」
「格好つけてない?」
「言っただろ、僕は紳士だ」
「サクラのくそジジイ共ものそうだけど、自動車屋のおっさんたちもどうして自分のポジションに恋々とするのか私にはわからないわ。伊藤はさすがよ。若い才能をどんどん育てる。そのために身を引くことも辞さないなんて格好良過ぎるじゃない」
「自動車屋のおっさんは差別用語になるかもな」
「あらそう? 本当は社員のことなんかよりも自分のことしか考えていない生ける屍って言ったやりたかったんだけど」
「香苗、これからそういうことは心の中だけで叫べ。香苗はサクラを変えようとしている救世主なんだ。どんなやつらが香苗の傍で耳を澄ましているのかわからない。言葉で足元を掬われるなんてバカバカしい」
「了解よ、伊藤社長」
「頼んだ、香苗」
「ところで伊藤」

