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千一夜
第28章 第五夜 線状降水帯Ⅱ  ①
「お父さんとお母さんは払わないじゃない? 不公平よ」
「何が不公平だ。今親父とお袋は僕と一緒に暮らしているんだ。そしてお前は伊藤の家を離れた人間だ」
「だったらうちの家族もお兄ちゃんの扶養家族にして」
「アホ」
「アホで結構です。こうなったのも全部お兄ちゃんのせいですから」
 伊藤の妹が反撃する。
「僕の? どういう意味だ?」
「私の才能を全部お兄ちゃんが奪ったんです」
「奪った? 僕がお前の才能を?」
「そうです」
「そう言えばお前には一つだけ目を見張るような才能があったな」
「どういう才能よ?」
「聞きたいか?」
「……」
 伊藤が自分を褒めるわけがない。伊藤の妹は黙った。
「お前が小学六年生のときだ。夏休みの」
「やめてよ」
 話の先がわかった伊藤の妹は伊藤の言葉を遮った。
「ふん」
「何がふんよ。あのとき確かに私はお兄様の読書感想文をパクりました。悪うございました。まさか私の担任がお兄ちゃんの担任だっただなんて知らなかったんだもん。お母さんまで呼び出されてたっぷり説教されたわ」
「僕はお前の剽窃読書感想文を読んだ。見事なパクり具合だった。お前は『てにをは』だけをいじってパクリの読書感想文を完成させた。そういう才能があったということに僕は感心したんだ」
「やっぱりバカにしているんじゃん。もうそんなことどうでもいい。はっきり言います。払えません。助けてくださいお兄様」
「お前の次のお願いが予想できる」
「何?」
「達也と奈々子の縁故採用」
 達也と奈々子は伊藤の甥と姪だ。
「達也と奈々子は私よりもまぁまぁ勉強ができるからいいじゃない?」
「勉強なんて当てにならい」
「何が当てになるの?」
「社会に出て人生を楽しみながら強く生きているやつらには共通しているところがある」
 伊藤はそこで間を取った。
「共通していることは?」
「何がしたいのかと言うことをしっかり持っている人間だ。そしてそのためにがむしゃらに突き進む。周りなんて気にしなくてとにかくやりたいことをやる。そういうやつらは失敗ですら糧にする」
「それってお兄ちゃんじゃん。お兄ちゃんはずっと偉そうにしてたわよ。小学校からずっと」
「間違いなく僕は偉い」
「それ自分で言う?」
「達也と奈々子を信じていない時点でお前は母親失格だ」
「……」
「少しはお前の心に響いたか?」
「たっぷり響いています」
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