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千一夜
第29章 第五夜 線状降水帯Ⅱ  ②
 希に日記をつける習慣はない。だが、忘れられない出来事は、頭の中にある記憶という箱の中に大切にしまっていた。誰に、いつ、どこで、何をされたのか? 希はそれらが鮮明に映っているフィルムを誰にも分らぬよう隠していたのだ。
 そのフィルムが今役に立つ。
「中学二年生の五月の日曜日。撮影が終わった後に、監督から『少し残ってくれないか』って言われたの。監督だから断ることができないし、だからスタッフの人がみんな帰った後一人で残っていたの」
「どうして残らないといけなかったんだ?」
「パッケージ写真の撮り直しだって言われたの」
「で?」
「ビキニを着て私がポーズをとってそれを監督が撮影したの。それで撮影は終わったと思ったんだけど」
「……」
 それで終わるわけなどない。パッケージ写真の撮り直しなんて口実に過ぎない。雌を自分のものにするための雄の言い訳だ。伊藤は腹が立った。
「監督はこう言ったわ『記念だから全裸の写真を撮ろう』って」
「それでお前はどう答えたんだ?」
「えー? って感じ。そんな約束してないし、それに全裸ってやっぱり恥ずかしいし」
「でもお前は全裸になったんだよな」
「うん」
「どうして?」
「だって監督が土下座して頼むんだもん。そんなことされると拒否できないし……」
 自分の臀部に当たっている伊藤の肉棒が硬くなるのが希にわかった。
「お前が全裸になってそれからどうなった?」
「監督は私の写真を撮り始めたの。おっぱいとかおま×こを手で隠そうとすると叱られたわ」
「お前を裸にしておいてお前を叱ったのか?」
「うん」
 こういう返事の仕方も伊藤のためだ。
「それだけじゃ済まなかったんだよな」
「えっ? ……」
 下手な演技だとわかっているが、希はここで伊藤をわざと焦らした。
「それから」
「ベッドに連れていかれて」
 希はここで間を取る。すべては伊藤のため。いや、自分のために。
「……」
 伊藤の手がうつ伏せにしている希の手を掴んだ。希の手を自分の肉棒に伊藤は誘う。伊藤が希を征服しているのではない。希が罠にかかった伊藤をコントロールしているのだ。
「ベッドに連れていかれて……『仰向けになれ』って命令されて……それから」
 ベッドが置かれた部屋に希と伊藤の知らない男。その舞台に希は伊藤を招待する。希は、あの日自分が何をされたのか伊藤に教える。事実と事実でないものを混ぜて。
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