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千一夜
第31章 第五夜 線状降水帯Ⅱ ④

「マ〇オということだから、十六人の男たちはみんなC国人か?」
「そうではないかもしれません」
「どうして?」
「彼女が言っていたんですが、十六人の男たちが話し合うとき、英語が使われていたこともあったそうなんです。同じ国の人間同士が話すのに英語を使うなんて変ですよね」
「なるほど。言葉の違う国の人間がコミュニケーションをとるときには英語が必要というわけか」
「ただ、全員がアジア人だったそうです」
「アジアでは日本のセクシー女優はアイドルなんだからな」
「ふふふ」
「ところで、その彼女は黙って男たちに輪姦されるのを待っていたのか?」
「まさか。契約をその場で破って日本に帰ろうとしたそうですよ」
「でも帰れなかった?」
「はい」
「……」
契約を破棄して帰ろうとしたが帰ることが叶わなかった。どうして叶わなかったのかと伊藤は訊ねたかったが、伊藤にも何となくだが予想がついた。
「I cannot.そんな風に彼女は、彼女を買った男に対して必死に抵抗したと言ってました」
「想像できる。その子は命がけで抗議したんだろうな。自分がこれからどうなるのかおおよそ見当はつく。場所は日本じゃない海外で相手の男たちの言葉もほとんど理解できない。コミュニケーションが全く取れない中で、このままだと撮影ではなく十六人の男たちからレイプされる。可哀そうだ」
「はい。自分にはできない。お金を返すからここから出してほしい。今すぐ日本に帰りたい。彼女はそれを英語と日本語で何度も繰り返したそうです」
「それで男はどうしたんだ? 彼女を買った男は彼女に何か言ったんだよな? なだめたりすかしたりしたんだろ」
「彼女言ってました。その男はただただニヤニヤ笑っていてノーノーとばかり言っていたと」
「十六人の男たちの獲物を逃がすわけないか」
「そうです。それから男は、彼女にお金を渡したそうです」
「追加料金?」
「そんな感じだと思います」
「……」
いくら? と訊ねたかったが伊藤はやめた。
「帯の付いた札束が二つ」
ユアは伊藤の心の中をよんだのかそう伊藤に教えた。
「日本のお金か?」
「はい」
「二百万……か」
金額に伊藤は驚いたのではない。ただ呆れたのだ。
「はい」
「受け取ったのか?」
「伊藤さん、彼女をバカにしないでください。そんなのいらないから日本に帰ると何度も何度も男に頼んだんです」
「……」
「そうではないかもしれません」
「どうして?」
「彼女が言っていたんですが、十六人の男たちが話し合うとき、英語が使われていたこともあったそうなんです。同じ国の人間同士が話すのに英語を使うなんて変ですよね」
「なるほど。言葉の違う国の人間がコミュニケーションをとるときには英語が必要というわけか」
「ただ、全員がアジア人だったそうです」
「アジアでは日本のセクシー女優はアイドルなんだからな」
「ふふふ」
「ところで、その彼女は黙って男たちに輪姦されるのを待っていたのか?」
「まさか。契約をその場で破って日本に帰ろうとしたそうですよ」
「でも帰れなかった?」
「はい」
「……」
契約を破棄して帰ろうとしたが帰ることが叶わなかった。どうして叶わなかったのかと伊藤は訊ねたかったが、伊藤にも何となくだが予想がついた。
「I cannot.そんな風に彼女は、彼女を買った男に対して必死に抵抗したと言ってました」
「想像できる。その子は命がけで抗議したんだろうな。自分がこれからどうなるのかおおよそ見当はつく。場所は日本じゃない海外で相手の男たちの言葉もほとんど理解できない。コミュニケーションが全く取れない中で、このままだと撮影ではなく十六人の男たちからレイプされる。可哀そうだ」
「はい。自分にはできない。お金を返すからここから出してほしい。今すぐ日本に帰りたい。彼女はそれを英語と日本語で何度も繰り返したそうです」
「それで男はどうしたんだ? 彼女を買った男は彼女に何か言ったんだよな? なだめたりすかしたりしたんだろ」
「彼女言ってました。その男はただただニヤニヤ笑っていてノーノーとばかり言っていたと」
「十六人の男たちの獲物を逃がすわけないか」
「そうです。それから男は、彼女にお金を渡したそうです」
「追加料金?」
「そんな感じだと思います」
「……」
いくら? と訊ねたかったが伊藤はやめた。
「帯の付いた札束が二つ」
ユアは伊藤の心の中をよんだのかそう伊藤に教えた。
「日本のお金か?」
「はい」
「二百万……か」
金額に伊藤は驚いたのではない。ただ呆れたのだ。
「はい」
「受け取ったのか?」
「伊藤さん、彼女をバカにしないでください。そんなのいらないから日本に帰ると何度も何度も男に頼んだんです」
「……」

