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千一夜
第31章 第五夜 線状降水帯Ⅱ ④

「彼女は、目や鼻や口のないのっぺらぼうの男たちから犯され続けていました。そんなとき、彼女にあるものが見えたそうなんです」
「あるもの?」
「そう、あるものです」
「何だよそのあるものって?」
「何だと思います?」
「……無理だ。想像できない。それはもともとホテルの部屋に備え付けられていたものなのか?」
「いいえ」
「ということは彼女を買った男か十六人の男たちのうちの誰かが持ち込んだということか?」
「そうなりますね」
「大人の玩具じゃないよな」
「ふふふ」
「おい、笑うなよ」
「ごめんなさい。でも部屋に持ち込まれた大人の玩具は一度も使われなかったそうですよ」
「どうして?」
「十六人の男たちです。大人の玩具を使って彼女の体を悪戯している時間なんてありません。それより大事なことは早く彼女の中に精液を出すことです」
「なるほど」
これが輪姦の現実だと伊藤は思った。
「伊藤さん、どうです? わかりましたか?」
「降参だ。想像すらできない」
「彼女の目に入ったもの、それは国旗です」
「国旗? 国旗って日の丸のことか?」
「はい。日本の国旗日の丸が見えたそうです」
「何のための国旗なんだ? 意味がわからん」
「伊藤さん、想像が足りませんよ。ベッドルームにいるのは彼女と彼女を買った男、そして十六人の男たちです。日本人は彼女一人だけです。あとはC国人、韓〇人、タ〇人、そしてシン〇ポール、マ〇ーシア、イン〇ネシア、それから香〇、マ〇オの男たちです」
「つまり女だけが日本人であるということを意味しているわけ? それを強調したいとか?」
「それもあると思います」
「それもってまだ他に何か意味があるのか?」
「……」
一瞬ユアは迷った。これを伊藤に話していいものなのか。
「……」
伊藤もこれ以上訊ねようとは思わなかった。訊けば気分を害する、そんな気がしたからだ。
「……どうしようかな、伊藤さん、私の話で怒らないでくださいね」
「僕が怒るような話なのか?」
「かもしれません」
「かもしれないか……」
「彼女何度か叩かれたそうなんです」
「叩かれた? 男たちに殴られたということか?」
「頬を平手打ちで」
「……」
伊藤は女に暴力をふるったことはない。セックスのとき、冗談でも伊藤は女を叩いたりしない。それはルールの問題ではない。女を殴ってはいけない、それは正義の問題だ。
「あるもの?」
「そう、あるものです」
「何だよそのあるものって?」
「何だと思います?」
「……無理だ。想像できない。それはもともとホテルの部屋に備え付けられていたものなのか?」
「いいえ」
「ということは彼女を買った男か十六人の男たちのうちの誰かが持ち込んだということか?」
「そうなりますね」
「大人の玩具じゃないよな」
「ふふふ」
「おい、笑うなよ」
「ごめんなさい。でも部屋に持ち込まれた大人の玩具は一度も使われなかったそうですよ」
「どうして?」
「十六人の男たちです。大人の玩具を使って彼女の体を悪戯している時間なんてありません。それより大事なことは早く彼女の中に精液を出すことです」
「なるほど」
これが輪姦の現実だと伊藤は思った。
「伊藤さん、どうです? わかりましたか?」
「降参だ。想像すらできない」
「彼女の目に入ったもの、それは国旗です」
「国旗? 国旗って日の丸のことか?」
「はい。日本の国旗日の丸が見えたそうです」
「何のための国旗なんだ? 意味がわからん」
「伊藤さん、想像が足りませんよ。ベッドルームにいるのは彼女と彼女を買った男、そして十六人の男たちです。日本人は彼女一人だけです。あとはC国人、韓〇人、タ〇人、そしてシン〇ポール、マ〇ーシア、イン〇ネシア、それから香〇、マ〇オの男たちです」
「つまり女だけが日本人であるということを意味しているわけ? それを強調したいとか?」
「それもあると思います」
「それもってまだ他に何か意味があるのか?」
「……」
一瞬ユアは迷った。これを伊藤に話していいものなのか。
「……」
伊藤もこれ以上訊ねようとは思わなかった。訊けば気分を害する、そんな気がしたからだ。
「……どうしようかな、伊藤さん、私の話で怒らないでくださいね」
「僕が怒るような話なのか?」
「かもしれません」
「かもしれないか……」
「彼女何度か叩かれたそうなんです」
「叩かれた? 男たちに殴られたということか?」
「頬を平手打ちで」
「……」
伊藤は女に暴力をふるったことはない。セックスのとき、冗談でも伊藤は女を叩いたりしない。それはルールの問題ではない。女を殴ってはいけない、それは正義の問題だ。

