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千一夜
第31章 第五夜 線状降水帯Ⅱ  ④
「伊藤さん、島国っていうワードで何を思い浮かべますか?」
「島国? 君の話の流れから推測するとそれは日本のことか?」
「はい」
「それがどうかしたのか?」
「それじゃあ、抗日は?」
「コウニチって日本語だよな。漢字でどういう風に書くんだ?」
「抗うという字に日本の日と書きます」
「ふん、わかったよ」
 数年前、伊藤はC国の映画会社から招待されて上〇に行ったときに、何本か抗日を扱った映画とテレビ番組を見た、というより見せられた。
 極悪非道の日本軍が最後にはレジスタンスのヒーローに退治されるという内容だった。戦争という現実の問題に、超人ヒーローの活躍を絡ませた脚本と演出に、伊藤はうんざりしたことを思い出した。
 映画の前半で徹底的に自国民が虐げられる場面を多く使い、最後に憎い敵を主人公がやっつけて観客は留飲を下げる。いわゆる反日の映画テレビのお決まりのパターン。
 気分が悪くなったが、映像の作り手である伊藤はある意味ほっとした。支配者らによって作品の隅から隅まで検閲され続ける国の映像に未来はない。不自由の中に押し込められたクリエーターは死を待つだけだ。
「島国、抗日って書かれている映画のポスターのようなものが部屋に貼られたそうです。そしていつの間にか日の丸に赤いマジックか何かで罰点の記がつけられていたそうです」
「島国、抗日は日本を貶めるワード。でもその彼女若いのによくわかったな、島国、抗日が日本をバカにしている言葉だなんて」
「いいえ、その言葉が何を意味しているのか本当に理解できたのは、彼女が日本に帰って来てからだそうです」
「可哀そうにな、若い日本人はわからないだろ」
「ですね」
「彼女はそういう恨みを持ったやつらから犯されていたんだな。彼女が悪いわけじゃないのにな」
「そして彼女の記憶から消えないものがもう一つだけあります」
「……」
 いつもなら何だよそれと言うところだが、伊藤はそう訊ねることに虚しさを感じた。
「すべてが終わったとき、つまり十六人の男たちが彼女の体を愉しんで満足したとき、ようやく彼女は獣たちから解放されました。彼女がふと窓の方を見たら明るかったそうです。彼女はその外の明るさが頭から離れないと言ってました」
「……」
 伊藤はユアの最後の話から女が見た外の明るさを想像してみた。地球が死を迎える前の明るさに違いないと伊藤は思った。
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