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千一夜
第32章 第五夜 線状降水帯Ⅱ  ⑤
「どうだ、体の方は?」
「順調よ、私も伊藤君のベイビーもめちゃくちゃ元気。伊藤君のベイビー、お腹の中でもの凄く暴れるんですけど」
「ふん、そうか。何かあればどこからでも駆けつける。僕に遠慮するな。わかってるよな」
「そうしたいけど、今は我慢するしかないわ。ここで私と伊藤君との関係が世間に漏れたら致命傷になるわ。今会社は絶好調よ。誰かに足を引っ張られたくない。伊藤君を大嫌いな人って意外と多いのよ」
「僕は誰かに好かれるために生きているわけではない」
「のんきなことを言ってる場合じゃないわよ。今が勝負のとき、絶対に負けられないの。それより伊藤君、疲れているみたいね。声がいつもの伊藤君と違うわ」
「朝から会議が三本、さっき昼食をとったところだ」
「今三時よ。昼食こんなに遅いの?」
 橘裕子は驚いて伊藤にそう訊ねた。
「もう慣れたよ。水とエナジーバーで過ごす日もある」
「副社長からの命令よ。しっかり食べなさい」
「了解だ。なぁ橘」
「何?」
「高校のときからお前は策士だったのか?」
「どうやったら伊藤君をものにできるかずっと考えていたわ。でも叶わなかったけど」
「本命はサクラではなくアメリカの映像制作会社の買収、そしてストリーミング会社への投資。君の秘策のお蔭で僕の会社の株が二日連続のストップ高になったよ」
 伊藤の会社はサクラメディアホールディングスの株取得を諦めた、というよりそれはブラフで本命は別にあったのだ。伊藤の会社は秘密裏にハリウッドの映像制作会社の買収協議を進めていた。同時にアメリカの大手ストリーミング企業への出資と業務提携を行うことを決定したのだ。さらに国内においては老舗のレコード会社と共に中堅のセレクトショップの買収も発表した。
 そして伊藤個人はアトランタにあるジャズ専門のラジオ局とニューオリンズにあるレコードショップを買った。
「日本のテレビには明るい未来があるなんてことを平気で言うとんちんかんなおっさんがいるグループなんて買う価値はないわ」
「相変わらず橘は厳しいな。テレビに未来はないか……」
「ごめんなさい」
 テレビ局出身の伊藤に裕子は謝った。
「テレビに未来はない、それは事実かもしれない。悲しいことだがその現実から目を背けたら僕の会社にも未来がなくなる」
「そう、その通りよ。伊藤君の会社、上場時の時価総額の倍になったわ。ここからがスタート」
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