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千一夜
第33章 第五夜 線状降水帯Ⅱ  ⑥
「土下座……、それはつまり私がここで倉田さんに頭を下げろということでしょうか? 私が土下座すれば、倉田さんにこれからの撮影に協力していただけるのでしょうか?」
「そうだけど」
 カレンは観察するような目で伊藤を見た。
「わかりました」
 伊藤はそう言って席を立ち上がろうとした。
「ちょっと待ってよ。あんたまじで土下座する気なの?」
「はい」
 伊藤はカレンの目を見てそう言った。
「伊藤」
「はい」
「あんたにはプライドとかないの? 仮にも大きな会社の社長なんでしょ。そんな社長が、私みたいなお騒がせ女優に土下座なんてできるの? あんたバカじゃない?」
「倉田さん、少しお話ししていいでしょうか?」
「何? 何の話?」
「今、倉田さんがプライドという言葉をお使いになられました」
「プライドのこと?」
「そうです」
「伊藤は小説も書くんでしょ。私、長い話嫌いだから、できるだけ短くまとめてくれる?」
「倉田さんの期待に応えられるよう頑張ります」
「……」
 カレンは伊藤の話を待った。
「実は僕、僕と言っていいですか?」
「どうぞ」
「実は僕、高校時代に野球をやっていたんです。野球部でしたが練習は月・水・金の週に三日。その三日間の練習も、時間は午後の六時までと決められていました。夏や秋の大会には出ていましたが、練習試合なんて一度もやったことがありません。と言うより、僕らのチームはどの学校からも相手にしてもらえなかったんです」
「弱いじゃん」
「その通りです。相手チームの野球が別次元に思えました。だから僕らが甲子園常連校のように毎日練習したとしても、結果に大きな変化はなかったかと思います」
「それで?」
「高校三年の秋でした。その頃はもう野球を引退していましたが、朝学校に出かける前に新聞を読んでいたんです。スポーツ欄のある記事に目が行きました。その記事はあるプロ野球の選手が戦力外となり、来年度から自分が所属していたチームのマスコットのぬいぐるみを着るというものでした。それを読んだ僕はこう言ったんです『こいつプライドあるの?』。僕の父も野球が好きなので、僕より前にその記事を読んでいたようです。父は僕にこう言いました『お前はプライドの意味を知っているのか』と。プライドはプライド、それ以外何かあるのか? 僕は父にそう答えました」
「それで伊藤のお父さんは伊藤に何て言ったの?」
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