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千一夜
第33章 第五夜 線状降水帯Ⅱ  ⑥
「静岡のクラウンメロンと徳島のさくらももいちごでございます」
 店員はそう言ってカレンと伊藤の前にコース料理の締めの水菓子を置いた。
 カレンは果物が入った器が置かれると、すぐに果物フォークでいちごを突きさしてそれを口に入れた。
 伊藤は黙ってカレンを見ていた。だが雑談で終わるわけにはいかない。カレンの協力がなければ撮影が前に進まないのだ。そうなると他の演者から不満が出てくることが予想される、いや実際に出始めている。役者は敏感だ。誰が撮影を止めているのかなんて探る必要なんてない。役者たちは同じ現場で同じ空気を吸っている。それに出演俳優らには他にもスケジュールがある。伊藤の会社の撮影だけに時間を割くことはできない。
「倉田さん」
「伊藤」
 伊藤の言葉をカレンは遮った。伊藤が自分に何を望んでいるのか、そんなこと考えるまでもない。アドバンテージを最大限利用する。
「何でしょう?」
「今度、伊藤の家に遊びに行っていい?」
「大歓迎です。僕の父は倉田さんの大ファンですから」
「ばらしていい?」
「ばらす……とは?」
「とぼけないでよ」
「とぼけておりませんが」
 伊藤は一瞬心の中にちくりと痛みを感じた。
「伊藤って、私より演技が美味いよね」
「どういう意味でしょうか?」
「あれって事故?」
「事故? 事故とは?」
「事故で私を寝た?」
「……」
 動揺は絶対にカレンに見せられない。
 カレンが言う事故、それはカレンがデビューした頃に、一度だけ伊藤はカレンと体の関係を持った。もっともその頃の伊藤はテレビ局の職員であっても、入社したばかりの小僧のような存在だった。しかし、業界にはそれなりの掟がある。テレビ局の新入社員が有名タレントと付き合うなんてことはご法度だ。仮にそれがマスコミに漏れたら、伊藤は芸能の世界から追い出される。もちろんその過去をカレンが話せば、伊藤には何かしらのペナルティが与えられるであろう。
「どうする?」
「倉田さんのお好きなように」
「しゃべっていいの? 大昔私が伊藤と寝たことを」
「構いません」
「この世界に居られなくなるかもしれなのよ」
「構いません」
「じゃあ止めにする。このカードは違う場面で使うわ」
「お好きなように」
「伊藤、ビビってない?」
「……」
 伊藤は苦笑いをした。
「ビビってたんだ?」
「……」
 伊藤は肯定も否定もしなかった。
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