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千一夜
第33章 第五夜 線状降水帯Ⅱ  ⑥
 伊藤はとても大切なことをカレンに確認していなかった。
 大昔、それは伊藤がテレビ局に入社したばかりの頃。伊藤はカレンを抱いた。偶然であり、ある意味それは事故……のようなものだった。
 新入社員にとってアイドルのカレンは雲の上の存在だ。たとえ偶然であっても、事故であっても、伊藤がカレンの中に入るには、それを装着することは当たり前のことだった。
 今カレンのま〇こを突いている伊藤の肉棒にはそれが被せられていない。伊藤は大女優倉田カレンのま〇この中に自分の肉棒を生で挿入しているのだ。
 ゴムが無ければ、伊藤の精液はカレンの膣中に発射される。
「中で出していいか?」
「はぁ?」
「中で出していいのかと訊ねているんだ」
「ダメに決まってるじゃん」
 断られるのは予想がついた。どうぞ中にお出しくださいと、大女優倉田カレンは言わない。でも伊藤には未練(倉田カレンのま〇こに中出ししたいという)があった。
「どうしても君の中で出したい。ダメか?」
「無理」
「頼む」
 伊藤はカレンのま〇こを突きながら懇願した。
「伊藤」
 カレンはそう言って上半身を起こした。そして卑猥な目をして伊藤を見た。
「……」
 伊藤はカレンの次の言葉を待った。
「条件があるんだけど」
「その条件を飲めば」
「飲んでくれたら、伊藤の汚いものが私の中で出されても我慢するわ」
「何だ?」
「伊藤の会社がW〇W〇〇で五話のドラマを作るわよね?」
「よく知ってるな」
「何が言いたいかわかるでしょ?」
「役は見つけておく」
 伊藤は初めて自分のルールを破ろうとしている。
「わかってないわね。役は役でも主役が欲しいの」
「おい!」
「ダメ?」
 キャスティングについてはまだプレス発表をしていない。だがすでに所属事務所を通して出演予定の役者たちのスケジュールはおさえ始めている。そういう流れはこの業界に生きるものなら皆わかる。カレンの条件を飲むということは、つまり、主役をやる役者を降ろすということになるのだ。
「……」
「大会社の社長って大したことないんだね。やっぱり伊藤はクズ」
 カレンが伊藤を揺さぶる。
「考えさせてくれ」
「ダメ。私、気が短いのよ。今ここで決めて」
「口約束になるぞ」
「口約束で十分よ。たとえ伊藤がクズでも、伊藤は口約束を守るわ」
「……」
「どうする? い・と・う・社長」

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