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千一夜
第34章 第六夜 線状降水帯Ⅲ ①
 二年後

「シュン、お前のために一つだけ言っておく。あの耳の大きい鼠がいる会社を買おうなんて思うなよ。そなことをすればお前は全アメリカ人から嫌われる」
 伊藤にレコードショップを売ったアルバートは伊藤のことをシュンスケではなくシュンと呼ぶ。
「耳の大きい鼠には興味がない」
「そこでだ、俺はシュンのためにいいものを見つけてきてやったぞ。今が買い時だ」
「どうせろくなものじゃないだろ?」
「シュン、これを逃したらお前は阿呆だ」
「じいさんが見つけたいいものって一体何なんだ?」
 伊藤はアルバートのことをじいさんと呼ぶ。気に食わないことがあれば、じいさんの前にFで始まるアルファベット四文字をつける。
「セインツだよセインツ」
「ふん。バカらしい」
 伊藤はそう言ってワイルドターキーが入ったグラスをあおった。
「聞いてるぞ、ロッキーズの共同オーナーになるのを断られたんだろ?」
「ロッキーズ? 共同オーナー? 今初めてじいさんから聞いた。一体誰がそんなことを言っているんだ?」
「とぼけるなよ」
「とぼけていないさ。初耳だ。おそらく僕がロッキーズファンで、最近僕の会社がアメリカの地方銀行の経営権を譲渡してもらったから、そこから連想して誰かがほらを吹いているんだ」
 伊藤は嘘を言った。ロッキーズの共同オーナーになろうとしたが、現オーナーグループはそれを許さなかった。それに加えて裕子が猛反対をしたのだ。そしてそのとき、伊藤は初めて鬼のような顔の裕子を見た。伊藤は裕子の判断にだけは従う。
「よしわかった。だったらセインツは諦めることにしよう。実はな、もう一つあるんだよ」
「NFLのチームを買う金がどこにあるんだ?」
「シュン、金持だったらそんな言い方をするな。嫌味になる。アメリカの銀行を買って世界で何番目かのゲーム会社も買収したんだろ? 金ならたっぷりあるじゃないか。それにNFLじゃない。ペリカンズだペリカンズ。どうだ? 少しは安くなっただろ」
「じいさんの魂胆はわかっている。若い娘をオーナー席に連れ込もうとしているんだろ? いい歳してそんな見栄はってもリターンなんて無しだ。天国のメアリーがじいさんの醜態を見たら泣くぞ」
「シュン、反則だ。メアリーのことを持ち出すなんてお前は男じゃない。だから俺もシュンの女関係を裕子にばらす」
「どうぞ」
「あーお前は昔からクソ生意気なガキだ」
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