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千一夜
第34章 第六夜 線状降水帯Ⅲ ①
「昔からじいさんは偏屈だった」
「老人のことを少しはたてろよ。そんなんでよく金持ちになれたな?」
「金持になろうとしたことは一度もない。ずっと芝居を作ってきただけだ」
「そういう言い方が嫌味なんだ。シュンは嫌味な男にまっしぐらだな」
「そしてじいさんは偏屈にまっしぐらだ」
 伊藤がそう言うと二人は目を合わせて笑い合った。
「まぁセインツのことは裕子に頼んでみる」
「無理だよ」
「裕子はお前と違って年寄りのことを大切にしてくれる。頭もいいし、美人だし、おっぱいも大きい。パーフェクトな女だ。シュンの女じゃなかったら俺がものにしている」
「じいさん、言っておくがセインツとペリカンズのことはあいつには話さない方がいい」
「どうしてだ?」
「じいさんの中の裕子のイメージが崩壊する」
「ははは」
 二人はまた大笑いをした。
「シュン」
「何だ?」
「お前には感謝している。シュンがアメリカに来ると必ずこの老いぼれを呼んでくれる。それも俺なんかが泊ったことなんてないこんな高級ホテルだ。まぁ飲んでいるのは安酒だけどな」
「安酒が一番うまいと言ったのはじいさんだぞ」
「その通り。安酒は人を選ばない。俺の親父とお袋はイタリヤからの移民だ。俺が子供のころは周りの悪ガキに虐められてばかりいた。辛かったね」
「……」
 伊藤はアルバートの次の言葉を待った。
「でも俺を救ったのは音楽だ、ジャズだ。ジャズを聴いているときだけは誰からも虐められなかった。デューク・エリントンのピアノを目を瞑って聴いている時間は、まさに至福の時間だったんだよ。だから俺はレコード屋の親父になった」
「その素晴らしいレコード店を僕が買った」
「ふん、でもな、昔はレジの金をくすめて近くの飲み屋に行くことができたが、今は何なんだ」
「おい、まさか今でもレジの金をくすめているんじゃないだろうな?」
 伊藤は敢えてアルバートの話にのった。中古レコードを買いに来る客は現金を使わない。スマホはすでに情報のやり取りをするだけのものではなくなった。財布をスマホに詰め込むのが当たり前の時代になったのだ。
「どうやってくすめることができるんだ? あの何とかコードって日本人が作ったんだよな。余計なものを作りやがって。日本人は俺の昔をぶち壊したんだぞ」
「ぶち壊しているのは日本人だけじゃない」
「だな。ははは」
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