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千一夜
第34章 第六夜 線状降水帯Ⅲ ①
「ジュリアのことありがとうな」
「ジュリアが一体どうしたんだ?」
「お前が買ったラジオ局に勤めさせてくれたじゃないか?」
「じいさん、本気で言ってるのか?」
「本気だ。日本語で言えば“まじ”っていうやつだよ」
「まったくあんたって人はまじでクソじじいだ」
 Fで始まる四文字のワード。
「どういうことだ?」
「僕は、知り合いの息子や娘に手加減はしない。たとえじいさんの孫娘でもだ。能力のない奴なん必要ないからだ。つまり、僕のラジオ局に入れたのはジュリアの実力だ。じいさん、孫娘を信じてやれないなんて最悪だな」
「本当なのか? 信じていいんだよな?」
「当たり前だ。ジュリアのことで僕は嘘は言わない。それに今ジュリアは僕のラジオ局で一番人気のパーソナリティだ。流石じいさんの孫娘だ。ジャズのことをよくわかっている」
「あいつが幼稚園に通っていた頃からマイルス・デイヴィスを聴かせていたんだ。ラップだとかヒップホップだとかわけのわからん音楽に現を抜かすことがないよう俺がきちんと教育してきた」
「じいさん、言っておくが、ラップもヒップホップも立派な音楽だ」
「あー金持ちになんかなりたくないね」
 アルバートは伊藤の会社がジャズ以外の音楽事業を営んでいることを知っている。
「ジュリアのお蔭で僕はアメリカでジャズの本を出すことができた。今回の出版記念パーティーの司会はジュリアだ。だからじいさんを呼んだ」
「ふん。じゃあジュリアが偉いということだな」
「その通り」
「ははは」
 二人はまた笑った。
「なぁ、じいさん。さっき僕は一つだけ嘘を言った」
「ロッキーズのことだよな」
「断られたよ」
「金か?」
「裕子に黙って金は用意しておいた。その金額に向こうが納得いかなかったのか、それとも他に原因があるのかわからない」
「でもどうしてロッキーズなんだ? 金無しの弱小球団だからか?」
「いや、ロッキーズがメジャーで一番美しいチームだからだ」
「美しい? ロッキーズが?」
「そうだ」
「俺のことを偏屈というが、シュンも相当偏屈だな」
「金無しの弱小球団でもできることはある。世界中を回って有望な選手を見つける。そして育てる。その選手たちにグラウンドで暴れてもらう」
「何年かしたらFAでどこかに行ってしまうぞ」
「それは選手の権利だ。でも選手を探して育成するチームに僕は憧れる」
「だから断られた」
 
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