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千一夜
第34章 第六夜 線状降水帯Ⅲ ①
 伊藤は黙っているようにと、紗耶香に向かって口元に人差し指を一本立てて見せた。
「どうした?」
 伊藤は裕子にそう訊ねた。
「さっきアルバートからメールがあったの」
「メール?」
「そう、メール」
「どうせろくでもないメールだろ?」
「メールにはこう書いてあったわ。“シュン、まだロッキーズを諦めず”とね」
「くそじじいが」
「何がくそじじいよ。F ワードは伊藤君なんですけど」
「……」
「永遠の野球少年は伊藤君の脳内だけに留めておいて。我が社は一円もお金を出しません。それから伊藤君の個人会社からもお金が出ることなんてありません。私が出すなと私が厳重に言ってます。どうせわかるでしょうから今言うけど、向こうのオーナーグループには私が断ってほしいと頼んでおきました」
「僕は僕のお金も自由に使えないのか?」
「使えません。もう好きなだけ使ったでしょ? 箱根の料理旅館、アトランタのラジオ局、それからアルバートの店、それから1969年製のマスタングの請求書を昨日見ました。買うのならアメリカの独立リーグくらいにしておいて。独立リーグの球団を買って、選手を探して育てる。それでいいじゃない」
「はぁ」
「ここでため息なんてする? メジャー球団を買収なんて絶対に許しませんから。万が一そんなことをしようとしたら、私は伊藤君の息の根を止めます。冗談なんかじゃないから」
「橘はどうやって僕の息の根を止めるんだ?」
「言っていいの?」
「いや、やめておく」
「あれ? 今猫の泣き声が聞こえなかった?」
「……」
 伊藤は裕子が何を言っているかわかった。
「にぁあという鳴き声が聞こえたんですけど。雌猫よね?」
「アトランタのホテルに猫はいない」
 伊藤はそう言って紗耶香を見た。
「あっ、そう。でも私、猫の監視も怠りませんから」
「どうぞ」
「何がどうぞよ。今度の取締役会で伊藤君を虐めてもいいのよ」
「それだけは勘弁してくれ」
「だったら猫と遊ぶのもほどほどにして」
「……」
「わかったの?」
「ご忠告ありがとうございます」
「バカ」
 裕子はそう言って電話を切った。
「あの、猫って何ですか?」
 紗耶香は伊藤にそう訊ねた。
「さぁ」
 伊藤はそう言ってスマホをナイトテーブルに置いた。それから伊藤はバスローブを脱いで全裸になり紗耶香にキスをした。いきなりキスをされた紗耶香は顔をしかめた。
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