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千一夜
第34章 第六夜 線状降水帯Ⅲ ①
 伊藤はベッドの上で大の字になった。
「舐めろ」 
 伊藤は紗耶香にそう命令した。
「……」
 紗耶香は勃起している伊藤のペニスを見て躊躇う。ペニスを口に入れるなんてことは恋人にもしたことがない。紗耶香にとって伊藤は好きでも何でもない赤の他人。おっさんの肉棒なんて頼まれても口に入れたくはない。でも、紗耶香は伊藤に逆らえない。
「早くしろ!」
 伊藤は声を大きくして催促した。
「……」
 渋々紗耶香は伊藤のペニスの根元の部分を掴んで、伊藤の肉棒の先をチョロチョロと舐めた。不味いものを食べたときのように紗耶香は顔をしかめている。
 嫌々自分の命令に従う紗耶香の顔を見て伊藤は満足している。美味しそうに肉棒を頬張られては興ざめだ。見ず知らずの父親くらいのおっさんのちんぽなんておいしいはずがない。それでいい、ずっとその顔で拙い口の奉仕を続けろと伊藤は心の中で思った。
「おい、いい加減先っぽだけでも口に中に入れろ」
「……」
 紗耶香は伊藤の指示通りに、亀頭だけ口に中に入れた。伊藤の亀頭は紗耶香の口の温かさを感じた。
「いつも言ってるよな。それだけじゃ気持ちよくならないんだよ。舌を使うんだよ舌を。何度も言わせるな」
「……」
 紗耶香は怯えた目を一回閉じて伊藤に答えた。そして少しだけ舌を動かした。
「それからアイスキャンディーを舐めるようにして舌を動かすんだ。いいか、舌の表も裏も使うんだ。今度お前が彼氏と寝るとき、こういう風にしてやれ。きっとお前の彼氏喜ぶぞ」
「……」
「今お前が舐めているのは彼氏のちんぽだと思って舐めろ、わかったな」
「……」
 伊藤は自分の肉棒を咥えている紗耶香をずっと見ている。紗耶香もまたときおり伊藤が感じているのか窺う。
「上達してきたな」
「……」
 ただ舐めるんじゃなくて強弱をつけろ。舌に力を入れてカリ首を絞め上げたりするんだ。お前の舌は蛇の舌だ。その舌はやがて亀頭から肉茎に巻き付いて来る。伊藤は何度もこう言って紗耶香を指導してきた。その成果がここアトランタのホテルのエグゼクティブスイートでようやく発揮された。
「ガキだと思ってたが、ようやくスケベの味がわかってきたようだな。いいぞ、続けろ」
「……」
 その言葉を聞いて紗耶香は内心ほっとした。おっさんの肉棒なんて真っ平御免だが、伊藤の機嫌を損ねるわけにはいかない。紗耶香にとって伊藤は金だ。
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