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千一夜
第34章 第六夜 線状降水帯Ⅲ ①
 できることならこの状況を紗耶香の彼氏に見せたい、そして聞かせたい。遠く離れたアトランタでお前の女は一体何をしているのか。
 伊藤も紗耶香同様戦っているのだ。紗耶香と紗耶香の彼氏がこの先どうなろうが伊藤の知ったことではない。だから思いきり声を出して、今お前の女を抱いていると教えたいのだ。それをしたところで伊藤は何も痛みを感じない。おそらく紗耶香だって紗耶香の彼氏だって、時間が経てば伊藤のことなど消えてなくなるに違いない。
 だがそれではつまらない。ひっそりと誰かの女を寝取る。寝取った女に自分の記をつけていく。紗耶香の彼氏は伊藤が紗耶香に残した記に気付かない。誰かの女を寝取る醍醐味はまさにここにある。
 その秘密を伊藤と紗耶香は共有する。
「雌犬」
 伊藤は紗耶香の耳元で小さくそう言った。もちろんスマホが拾えないくらいの声の大きさだ。
「今日は楽しかった?」
 紗耶香の彼氏が紗耶香にそう訊ねるのが伊藤に聞こえた。肉棒を紗耶香の膣奥に潜り込ませたまま伊藤は動かないでいる。少しでも紗耶香のま〇こを突けば、隠すことなどできない紗耶香の喘ぎ声が、紗耶香の彼氏にバレてしまう恐れがあるからだ。こうやって身を忍ばすようなことをしていることに伊藤は興奮している。
「うん、楽しかったよ」
 伊藤は嫉妬した。紗耶香が彼氏に話す声は明らかに自分のときとは違う。
「どこに行ったの?」
「あっ……えっ? 買い物と……うっうっ……水族館……」
 嫉妬した伊藤は紗耶香にお仕置きをした。二度三度強く紗耶香のま〇こを突いたのだ。
「紗耶香、変だよ、今日」
「疲れてるから」
「そうなの?」
「うん……あっ……ダメ」
 伊藤は紗耶香のま〇こを突きながら紗耶香の脇の下に顔を入れて紗耶香の脇の下を舐めたのだ。
「紗耶香どうしたの?」
「テレビで映画を見てたの」
「映画って全部英語でしょ?」
 面白くない会話が続きそうな気配がした。伊藤はまた紗耶香の耳元で何かを言った。
 伊藤はこう言ったのだ。「いつものようにしろ」と。
 紗耶香は「うん」と声は出さずに頷いた。
「ユンは今何をしているの?」
 ユンは紗耶香の彼氏の名前。
「何もしてないよ。夕方からバイト」
「授業は?」
「今日はないよ」
「だったらあれする?」
「あれ?」
「嫌?」
「嫌じゃないよ。紗耶香やってくれの?」
「ユンを気持ちよくしてあげる」
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