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千一夜
第37章 第七夜 訪問者
 私は玄関のドアを開けた。
「こんばんは」
 夜の訪問者はそう言って頭を下げた。
「こんばんは」
 私は訪問者につられるように頭を下げそう挨拶をした。
「夜分遅く失礼します」
 そう言って私に挨拶した女は、ダメージジーンズに白いTシャツを着ていた。
「……」
 私は言葉を出すことを忘れてしまった。綺麗な女だ。そして可愛い女だと私は思った。うりざね型をした小顔のその女は、美しさと可愛さの二つを備えた女だった。
「私、立花京子です。覚えていませんか?」
 夜の訪問者は私にそう訊ねた。
「立花京子さん……」
 私にこんなに綺麗な女の知り合いなんていない。これだけ可愛い女と巡り合った記憶はない。
「長谷川さんが覚えていらっしゃらないのは当然です。だって私が長谷川さんにお会いしたのは三十前なんですから」
「三十年前?」
「そうです。もう三十年になると思います」
「ということは私が大学一年生のとき、あなたにお会いしたのですか?」
「そうです」
「申し訳ない、記憶が」
「トリコロール」
 京子は私の言葉を遮ってそう言った。
「トリコロール……」
「覚えていませんか?」
「あっ!」
 思わずそう声を出してしまった。トリコロールは私が大学一年のときに働いていた新橋の喫茶店の名前だ。
「思い出していただけましたか?」
「確かに大学一年生のときに私はそのお店で働いていました。でも当時のトリコロールは従業員全員男だったと思うのですが」
「ふふふ」
「お客さん……ですか?」
「ちょっと違います」
「……」
 私が知っている従業員は全員男だ。それにトリコロールは男の常連客で席が埋まる店だ。
「ヒント」
「ヒント?」
「ピーターパン」
「ピーターパンがヒント?」
「そうです、ピーターパン」
「……ピーターパン」
 トリコロールとピーターパン、何かが繋がりそうなのだが。
「ふふふ」
 京子は口に手を当てて笑った。
「あっ!」
「思い出していただけましたか?」
「京子ちゃんだよね? 確かどこかの劇団に入っていたとか?」
「正解です。お久しぶりです」
 立花京子はそう言って頭を下げた。
「あのときの京子ちゃんも可愛かったけど、今はとても綺麗だ」
 女性にそんなことを言ったことなど一度もなかったが、その台詞は自然と口から出た。私はお世辞を言ったのではない。立花京子は本当に綺麗だった。
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