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千一夜
第37章 第七夜 訪問者
 封筒を開ける必要などない。中に何が入っているのか、私には想像がついた。だからと言って咲子の前で封筒の中を見ないわけにはいかない。私は封筒の中からA4サイズの書類を出した。
 私に関することが書いてあるのはわかっていたが、私の利き腕までも調べていることに私は驚いた。
「ごめんなさい」
 咲子が私に謝った。
「当然のことだと思います。会長からすれば私なんてどこの馬の骨かわからないような人間です。でも調査会社はすごいですね。ここまで調べられているなんて知りませんでした」
「実は私、一つだけ気になることがあったんです」
「どうして私が今まで独身だったのか?」
「はい」
「特に理由なんてありません。付き合いたいとか、結婚したいなと思った人には彼氏や旦那さんがいただけです。ひょっとして私のことをゲイだとか」
「……」
 咲子は小さく頷いた。
「恋愛に積極的になれなかっただけです。世の中には女性からふられることで、全人格を否定されてしまったと感じる人間がいます。多分私はそういう男なんです」
「多分?」
「そうならないために私は自分から告白しなかった。そんな男は誰からも告白されないんです」
「なんだか自虐的ですね」
「いえ、そういう生き方しかできなかったんです。まぁ、それを自虐的だと言えばそれまでですが」
「安心しました」
「安心?」
「私はそういう人たちを差別したりしません。ただ、自分がお付き合いする人はノーマルであってほしいんです。それを差別だと言われれば私は反論できませんが」
「あなたは正直な人です。それに」
 そう言いかけて、私は笑った。
「それに……それに何ですか?」
「怒らないでくださいね。私は遠山機械工業のお嬢様のあなたを傲慢で我儘な女性だと勝手に思っていました」
「失礼な人。ふふふ」
「ははは」
 私も咲子につられて笑った。
「長谷川さん」
「はい」
「これから私が話すことを長谷川さんは恫喝と受け取られと思います」
「恫喝?」
「話しても構いませんか?」
「どうぞ」
「このお話を長谷川さんが受けないという選択肢は存在しません。仮に長谷川さんが存在しない選択肢を選んだ瞬間、長谷川さんは○○市体育館の館長に異動させられます。そうなると長谷川さんは二度と市役所に戻ることができません」
「……」
 市長と遠山機械工業の会長が絡んでいる。私に逃げ道はない。
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