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千一夜
第37章 第七夜 訪問者
「ごめんなさい」
 咲子が私に謝った。
「体育館の館長も悪くないかなと思ってます。信じてもらえないかもしれませんが、私には人を押しのけても上に行きたいという出世欲はないんです。もう私は若くない、そういうところで静かに暮らしていければ十分です」
 これは私の本音だ。
「ふふふ」
「……」
「私、父に言ったんです。長谷川さんに脅しは通用しないと」
「で、会長は何とおっしゃってましたか?」
「馬鹿な男だ。でも」
「でも?」
「でも必ず市長にする。泣こうが喚こうが必ず馬鹿な男を市長にする」
「市長……ですか」
 私は何か重いものを背負わされたような気分になった。
「嫌ですか?」
「市長になんてなるつもりはありません。私には荷が重い」
「……」
 この話題はどこまで行っても平行線になる。それより私にはどうしても咲子に訊ねたいことがあった。
「一つあなたにお訊ねしたいことがあるんですが」
「いくつでも構いませんよ。きちんと長谷川さんにお答えします」
「それでは遠慮なく。咲子さんは私のことを市の広報で知ったと市長から聞きました。それは本当のことなんですか?」
「本当です」
「広報に載っている私なんて冴えない五十前のくたびれたおっさんです。どうしてあなたのようなお綺麗な方が私になんかに興味を持たれたのでしょうか?」
「長谷川さんは、くたびれたおっさんなんかじゃありませんよ。写真だけで長谷川さんが真面目で誠実な方だということがわかりました」
「写真だけで?」
「長谷川さんはご存じかと思いますが、私一度結婚に失敗しているんです。若かったというせいにはしたくありませんが、私にはそのとき男を見る目がなかったんです。それから私は人を見る目を養ってきました。どういう人間が本物で、どういう人間が偽物なのかを見極める目です」
「私は?」
「ふふふ、もちろん本物です」
「私はもうすぐ五十です」
「それなら私は四十です」
「あなたはサラブレッドで私は駄馬」
「ふふふ。長谷川さん、駄馬だなんて馬に失礼ですよ」
「ははは」
 私が笑うと、咲子も笑った。
「長谷川さん、今度の日曜本気で勝負してくれませんか?」
「ゴルフ?」
「ええ」
「私が勝っても会長に告げ口とかダメですよ」
「長谷川さん、私を見くびらないでください。ふふふ」
「咲子さん」
「はい」
「私とお付き合いしてください」
「はい」
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