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千一夜
第37章 第七夜 訪問者
「目出たい目出たい。長谷川君、本当に目出たいよ。おめでとう」
 七十の老人が顔をくしゃくしゃにしてそう言った。
「市長、私はまだ結婚したわけではありません」
「長谷川君、君はもう咲子さんと結婚したも同然だ。ははは」
 引退後は遠山機械工業の社外取締役の地位が約束されたことに市長は安堵しているのだろう。目出たいと言っているが、それは自分に向けての言葉だ。
「市長、いつ咲子さんの心が変わるかわかりません。ですから」
「長谷川君、そうならないためにがんばるんだよ。君は男だろ」
「……」
 そうならないためにがんばる恋愛とは一体何なのだ。
「遠山会長から聞いたよ。次の日曜日咲子さんとゴルフなんだって?」
「はい」
「私も会長も一緒に回りたいところだが遠慮しておく。そうだそうだ、ゴルフの後は温泉でも行ったらどうだ? 有給を使ってさ、これは私と会長からのプレゼントだ」
 市長はそう言うと、すでに手配済みの北海道旅行の書類を私の前に置いた。
「これは?」
「だから言っただろ。私と会長からのプレゼントだよ。中身を確認してくれ」
「一週間!」
 誰が申請したのかわからないが、私は一週間の休みを取ることになっていた。
「幸い今役所には面倒な仕事がない。君が常日頃がんばっているのは職員全員が知っている。一週間くらい君が休んでも誰も文句は言わない。それに君は次期市長だ」
「……」
 面倒な仕事がなくても、役所の仕事が全くないわけではない。
「君、さっき言ったよね」
「……」
「咲子さんの心が変わるかもしれないと」
「はい」
「咲子さんの心が変わらないように男としてすることがあるだろ」
 市長はそう言うと口角を少し上げた。
「……」
「とにかくだ、君は咲子さんとゴルフと温泉を楽しんできなさい。これは命令だよ命令。ははは」
「……」
 悲しいかな、大きな力に抗うことは今の私にはできない。ゴルフと温泉がセットになったことは、すでに咲子も知っているはずだ。いや、咲子が承知したからこそ、温泉がゴルフについてきたのだ。
 市長室を出た後、私は咲子に電話した。
「久しぶりなの、夏の北海道は」
 咲子はそう言った。
「私と北海道……、いいんですか?」
「いいも何も、夏の北海道は私のリクエストなんです。長谷川さん、北海道は?」
「出張で一度だけ札幌に」
「だったら私が長谷川さんを北海道を案内します」
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