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千一夜
第38章 第七夜 訪問者 隠し事について
「ふん。でも長谷川が出世するのわかるわ」
「出世?」
「同期の私が長谷川を呼び捨てにしても長谷川は怒らない。部下からは慕われているし、上司からも一目置かれている」
「香坂だってそうだろ?」
「全然ダメ。部下は私を口うるさいおばさんだと思っているだろうし、年下の上司は私の存在を無視しているわ」
「香坂の上は誰だ?」
「いいわよ。私が長谷川に告げ口したみたいになるじゃない。それに無視されてる方が仕事が楽なの」
「本当にいいのか?」
「私メンタル強いから」
「だよな」
「ふふふ」
 香坂が笑った。私も香坂と一緒になって笑った。
「変なこと訊いて悪かったな」
「別に。でも長谷川、女には注意しなさいよ。長谷川は今大事なときなんだから。遠山のお嬢様のご機嫌を損なわないようにしないといけないわ。でないと次の市長になれないわよ」
「もう一つ香坂に訊ねていいか?」
「どうぞ」
「来年、私はどうなっている?」
 何故か職員たちは私のスケジュールを知っている。私に関しての情報は職員に訊ねるのが一番だ。
「噂よ、それでもいい?」
「ああ」
「来年長谷川は次長に昇格する。その三か月後伊藤は市役所を退職。それから遠山機械工業に役員として招かれる。まぁそのどこかでお嬢様と結婚するんでしょうけどね。新婚旅行のお土産期待しているから」
「はぁ」
「ああ、私もそういうため息をついてみたいわ」
 市長と遠山機械工業の会長がそう決めているのだろう。誰がリークしているのか考える必要なんてない。情報はウイルスとなって広まっていく。ウイルスに攻撃された私は逃げ場を失う。自分で作った弁当の味がわからなくなった。
 退庁して私はスーパーに向かった。おそらく、いや間違いなく今日も京子は私の家にやってくる。私はそれを待っている。
 買い物が終わり、買い物袋を助手席に置いて私は車を発進させた。私の家は郊外にある。私はいつもより気を付けながら帰り道を運転した。安全運転はもちろんのことだが、この道を京子はどうやって来るのだろうか。それが気になったのだ。
 田舎の夜道、歩いている人間なんて見たことがない。私の家の近くにはバス停はないし、そもそも夜の八時にバスはこの街を走らない。だったらタクシーか……。
 家に到着した。私は鞄とスーパーの袋を持って家の中に入ろうとした。そのときだった。
「亮ちゃん」
 京子の声が聞こえた。
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