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千一夜
第38章 第七夜 訪問者 隠し事について
 京子が来ることは何となくわかっていた。
 いやいや、わかっていたと言うより、京子が私の家を訪ねてくるのを期待していたと言った方がいいのかもしれない。だからスーパーではトリコロールのピラフを作るための食材を買ったのだ。
 ただ残念なのは、トリコロールで使っていたバターがスーパーでは売られていなかった。まぁ売られていたとしても、私の作ったピラフはトリコロールのピラフの味には近づくこともできない。
 バックを持たずに京子は今日も白いTシャツとジーンズという格好をしてた。
「亮ちゃん、また来ちゃった」
「構わないよ。京子ちゃんならいつでも大歓迎だ。京子ちゃん、お腹減ってるだろ?」
「わっかった?」
「これ、今日はトリコロールのピラフを作るよ」
 私はスーパーの買い物袋を掲げて京子に見せた。
「サンキュー亮ちゃん」
 二人で家に入る。私はキッチンに向かい。京子は私の書斎に入っていった。どうやら京子の探検は、今日も続くのだろう。
 不思議なのは、京子と会うと私の中にくすぶる京子に対する疑問が溶けてなくなってしまうのだ。そしてもう一つ。咲子が私の記憶から綺麗に消える。
 小さな家には私と京子だけ。そこは誰も立ち入ることができない私と京子が棲む異世界のようであった。
 料理を作りながらリビングを見ると、京子がソファに座って何かの本を読んでいた。
「それ面白いか?」
 私は京子にそう訊ねた。
「全然」
 本を閉じて京子はそう言った。
「本のタイトルは何?」
「経済原論」
 京子は閉じた本の背表紙を見てそう言った。
「大学の授業で使ってた教科書だ」
「そんなの今でも持ってるの?」
「ああ」
「断捨離しなさいよ」
「だよな」
 私も京子の意見に概ね賛成だ。だが、当時の教科書を見ると、楽ではなかった大学生活が蘇る。あの頃を忘れるな、それは自分への戒めみたいなものだ。
「できたぞ」
「超美味しそう」
「……」
「いただきます」
「サラダも食べろよ」
 京子の親みたいなことを言う自分がおかしくなった。そして私はしばらく京子の親のように京子の食べる姿を見ていた。
 私はあることに気付いた。親のように京子を見る私の目と京子の目が何度か合ったのだ。京子の目は無邪気気な子供の目ではなかった。だからと言って落ち着いた大人の目でもない。
 私ははっとした。京子の目は妖しく私を誘っていたのだ。
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