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千一夜
第38章 第七夜 訪問者 隠し事について
 私の心が乱れる。私は京子と寝たい。京子の体を貪りたい。本当の妹だと思って接していた京子にそういう思いを抱くことは間違いだということはわかっている。
 でも私の中に潜んでいる雄の本能が私にこう語りかけるのだ。「あの頃の京子と今の京子は違うだろ。胸を見てみろ。ぺたんこだったおっぱいが成長して膨らんでいるじゃないか。ツルツルま〇こだってもう立派に毛が生えているに違いない。京子はもう子供じゃない。大人だよ大人。だったら犯してもいいんじゃないか? ていうかお前は京子を犯したいんだろ」
 雄の本能のせいで私のペニスが硬くなり始めた。京子にそんなことは知られたくない。京子の裸を想像してマスターベーションしたことも悟られたくない。
 私は京子の目が怖い。すべてを知っている目。京子の目は私の硬くなったペニスに気付いている。そしてマスターベーションのことも知っている。
「亮ちゃん、どうかした?」
「いや……ピラフ美味しいか?」
「亮ちゃん、ちょっと変だよ。さっきから同じことを言ってる」
「……ごめん」
 どうやら私は、京子に同じ質問を繰り返していたようだ。
 妙な感覚だ。だが悪くない。目の前には可愛い京子がいる。いや美しいと言った方がいいかもしれない。これ以上京子との距離が縮まると私は自分を制御できなくなる。
「亮とゃん、後で映画見ようよ?」
「何がいい? 古い映画のDVDしかないけど」
「亮ちゃんの好きな映画でいいよ」
「了解だ」
 DVDボックス収められている数十枚の映画はすべて私のお気に入りの作品だ。この中から何を選ぼうか。恋愛映画は京子に何か勘違いされてしまうかもしれない。人間ドラマのようなシリアスな作品は重過ぎるし、アクションやコメディでは逆に軽すぎる。
 ミステリーが無難か。私はロマン・ポランスキーが監督をしたフランティックを選んだ。主演はハリソン・フォード。
「この映画面白いの?」
 京子はDVDケースのジャケットを見てそう言った。
「それは見てのお楽しみだ」
「ふふふ」
 私と京子はソファに並んで座った。体が触れるか触れないかの微妙な距離。こんなに近く女性と並んで座った経験が私にはない。
 何度も見た好きな映画なので、ミステリーがテーマでも安心して見ることができるはずなのに、どうにも心が落ち着かない。こういうとき私はどうすればいいのだろうか。
 映画が始まった。
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