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千一夜
第40章 第七夜 訪問者 影
「咲子さんは飲まないんですか?」
「ええ。長谷川さんのためのお酒です。私に遠慮しないでください」
 三十四階にあるコーナーデラックツインの部屋。私と咲子は夜景を見るために夕食を早めに切り上げた。竹内が用意した酒とオードブルがテーブルの上に置かれていた。ホテルのデリバリーが気に食わなかった咲子が、竹内に用意させたのだ。ただ、なぜか咲子にはアルコールではなく炭酸水が用意されていた。
「札幌がこんなに美しい街だなんて知らなかった」
 グレンリベット12年を一口飲んで私はそう言った。
「ふふふ、長谷川さんでもそんなこと言うんですね」
「私だけじゃない。この夜景を見たらみんなそう言うと思いますよ」
「長谷川さん、札幌は二度目ですよね?」
「はい、ずいぶん前に仕事でお世話になった街です」
「そのとき夜景は?」
「夜景ですか? 夜景が楽しめるところには行ってません。泊ったところは朝食付きのビジネスホテル。昼と夜はラーメンで済ませました。役所の出張なんてそんなものです」
「じゃあ、あの話って本当なんだ」
 咲子は何かを思い出したようにそう言った。
「あの話? 何ですかそれ?」
「市議会議員視察旅行事件」
 咲子はきっぱりとそう言った。
「ああ、あれか……。でもよくご存じですよね」
「父が……」
 私のことは咲子の父によって調べられている。どういうわけか私の小学生時代の成績まで咲子は知っていた。
「思い出したくはないですが本当の話です」
 正確な言い方をすれば市議会議員慰安旅行事件と言った方がいだろう。あの頃私は議会事務局に所属していた。
 視察先の近くに全国的に有名な温泉街があった。実際に視察したのは私一人。広報に載せる議員報告も私が書いた。その間、議員たちは温泉で豪遊。もちろんその費用は税金で賄われる。それ自体大問題なのだが、私は別の問題で窮地に立たされた。
 帰庁して、当時の上司に報告した後だった。
「君、お土産は?」
 上司はにんまりしてそう言った。
「お土産? 何でしょうか?」
「君、○○温泉に行ったんだろ?」
「私は行っておりません」
「じゃあ何しに行ったの?」
 上司のその言葉に、私の中の何かが壊れた。
「私は仕事で○○市に行ったのであってお土産を買うために行ったのではありません!」 
 私の大声に驚いたのは上司だけではなかった。
 
 
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