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千一夜
第40章 第七夜 訪問者 影
 夜はいつまでも夜ではない。黒い世界を照らしてた灯りが一つ、そしてまた一つ消えていく。真っ暗な闇も眠りにつく。陽の光が現れると闇はどこかに消える。それは森羅万象の決まりであり、大昔も今も、そして未来もこの法則が変わることはない。
「先に休みます」
 咲子はそう言ってベッドに入った。
 私と咲子を隔てている障害物が一つ一つ取り除かれている。だからと言って咲子のベッドに潜り込んで、咲子を自分のものにする勇気は私にはない。
 江戸時代、私の街を治めていた藩の家老は遠山中膳と言う。名字からわかるように、遠山家は遠山中膳の子孫となる。つまり遠山咲子には武士の血が流れているのだ。
 私の中に流れている血は平民の血。おそらく私の先祖は足軽にさえなることができなかったであろう。 
 身分が違うと言ったら、時代錯誤も甚だしいのかもしれない。ただ、私にはそれを跳ね返す力がない。世が世なら私など咲子の視界にすら入ることができない人間なのだ。
 そしてもう一つ。これもまた私にとって大きな問題なのだが、私は女の経験が全くない。いや、正確に言うとほとんどない。
 少し前、私は京子と交わった。私は京子の期待を裏切った。京子から手でいじられても、京子の穴に挿入しても、私は我慢できずに数秒(時間を計ったわけではないが)で射精した。京子をいかせることなく、私は一人で果てた。
 もし、咲子に飛びつき咲子の体を貪ろうとしても結果は同じ。きっと咲子は私に失望するに決まっている。
 私はそのことで咲子との関係が終わることを恐れているのではない。咲子との付き合いがほんの数日で終わり、統括課長の任を解かれ、市の体育館の館長になったとしても、私はそれはそれでいいと思っている。むしろその方が私に似合っているのではないかとも思っている。
 仕事はきっちり定時で終わり、家に帰り食事の支度をする。家では本を読み、好きな音楽と映画を見る。それから年に一度どこかに旅に出る。誰かから妬まれることもないし、誰かを羨むこともない。平たんな時間はゆっくり過ぎていく。
 もしかしたら私はそういう人生を望んでいるのかもしれない。それなら私は何を恐れているのか……。
 私が恐れているもの……。
 女の経験がほとんどないということ、そして早くいってしまうこと。私は、咲子から嘲笑されるのが怖い。女の悦びを私は咲子に与えられない。
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