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千一夜
第40章 第七夜 訪問者 影
 飲みなれない高いスコッチのお陰で私は眠りにつくことができた。
 酒が嫌いなわけではないが、私は晩酌の習慣がない。一人暮らしのせいでついつい深酒になり、そのせいで仕事に支障をきたすことだけはどうしても避けたい。週末にビールを飲むことがあっても、平日私の体の中にアルコールが入ることはない。
「おはようございます」
 目が覚めて体を起こすと、朝の札幌の風景を見ていた咲子が私に朝の挨拶をした。
「おはようございます」
 アルコールの助けを借りるとだいたいこうなる。どうもすっきりしない。そして何となく体が重い。
「よく眠れました?」
「そいつのお陰で何とか」
「ふふふ」
 咲子は私の視線の先にあるグレンリベットを見て笑った。
 私はナイトテーブルに置いた1964年製のキングセイコーを手に取り時間を確認した。時間は六時五十分。いつものようにキングセイコーのゼンマイを巻いてそれをもう一度テーブルの上に戻した。
「シャワーの時間あるかな?」
 深酒のせいだろうか、いつもより汗をかいている。
「大丈夫、ゆっくりシャワーを浴びてきてください」
「ありがとう」
 バスルームに行き、私は少し熱めの湯を浴び汗を流した。
 服を着て部屋に戻ると、咲子はまだ窓の外を眺めていた。
「長谷川さん、お腹空いたでしょ?」
「咲子さんは?」
「ペコペコ」
「待たせてしまってごめんなさい」
「ふふふ、全然」
「竹内さんは?」
「もう済ませたと思いますよ」
「もう?」
「ええ」
 部屋を出て、私は咲子と一緒にホテル三階の朝食会場に向かった。会場入り口に竹内が私たちを待っていた。竹内は咲子から部屋の鍵を受け取り、私と咲子のスーツケースを車に運ぶ。
「竹内さん、私のスーツケースは私が運びます」
「いいえ、これは私の仕事です」
 竹内はそう言って譲らない。そして竹内は旅の間ずっと私のスーツケースを運び続けた。
 竹内の後姿を見ている私に咲子はこう言った。
「私の父は絶対に竹内を手放さない。その竹内を父から借りてきたんです」
「参ったな」
「長谷川さん、朝はしっかり食べておきましょう。ホテルを出たら竹内の運転する車は道東自動車道に乗ります。車に揺られているのも疲れますよ」
「了解です。でも一番疲れるのは竹内さんでしょうね」
「ふふふ」
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