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千一夜
第45章 第七夜 訪問者 戦い
 副市長なんて面倒くさい。確かにその通りだ。
 この街は遠山で成り立っていると言っても過言ではない。遠山のご機嫌を伺いながら舵取りをしていかなければ、この街に未来はない。研究機関や工場の一部を移転されるだけでも街の損失は計り知れない。
 私の記憶に間違いがなければ、遠山機械工業の平均年収は、上場企業の中では上から二十番目に数えられるはずだ。従業員数約五千人。子会社を含めると一万人を超える工作機械のリーディングカンパニー。所有する広大な土地には研究棟、工場だけではなく、社員のためにつくられた贅沢な運動施設や文化施設が作られていいる。
 あるとき、咲子の父遠山高獅は社員を前にしてこう言った。
「徹底的に稼いで儲ける。そして君たちの給与を徹底的に上げる。だからライバルには遠山の影を踏ませるな」
 咲子の父は、その約束を守っている。
「フットサル場だけじゃないよな」
 私の心の声が漏れた。
「そう、遠山ベースボールパーク。長谷川が遠山のお嬢様とご旅行にお出かけのときだったわ」
「君は副市長になってもそう言って私を苛めるんだろうな」
「当り前じゃない」
「あの高校、出禁になったんだよな」
「当然」 
 遠山ベースボールパークはどこかに貸し出すために作られた施設ではない。そもそも遠山の運動施設はすべて社員のために作られたものだ。
 フットサルのチームが十二もあれば、遠山には野球チームも数多くある。軟式だけでなく硬式の野球を愛好するチームもあって、両翼百m、センター百二十二m、バックネット裏、一塁側内野席、三塁側内野席合わせて千席、夜間照明の設備を備えた野球場にはいつも野球を楽しむ選手の姿がある。
 問題は私が咲子と北海道旅行を楽しんでいるときに起こった。
 三日間、県内にある野球の強豪校に遠山ベースボールパークが貸し出された。その高校の三日間の合宿が終わった後、バックネット席の下にある用具室から遠山機械工業のチームが使用する硬式球が紛失したのだ。新球十ダース。百二十球の新しいボールが消えた。損害額はおよそ七万円。
 会社は高校に問い合わせた。
「間違ってボールを持って帰ったと言うようなことはないか?」
 と。
 高校の答えはこうだった。
「生徒たちに訊いたが、そういうことはない」
 との回答だった。
 ところが、あるところから高校の回答にほころびが出た。
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