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千一夜
第40章 第七夜 訪問者 影
 誰かがいる。いや、私は誰かから見られている。
 クッシー? そんなはずはない。咲子には申し訳ないが、私はこの美しい湖に未確認生物がいるなんて信じていない。
 それとも熊? 今ここに熊が出没したとしても不思議ではない。私は辺りを見回した。幸いなことに、私たちは明日のニュースで取り上げられる熊の被害者にはならずにすみそうだ。それに私が感じた視線(あるいは視線のようなもの)は野生の動物のものではない。
 カメラの望遠レンズを覗いている誰かが私たちを盗撮している? これも違う。そもそも私たちを盗撮する意味などない。咲子は別として私は有名人ではない。役所の職員の写真など何の価値もない。そして、お互い独身である私と咲子のツーショット写真も不倫ネタにはならない。
「どうかしました?」
 私を見て咲子がそう言った。
「熊がいるような気がして」
 誰かに見られているとは言えなかった。
「ふふふ、仮に熊がいたとしても大丈夫ですよ」
「大丈夫? それはどうしてですか?」
「竹内が撃ってくれます」
「撃つ……とは?」
「竹内は第一種銃猟免許を持っているんです」
「猟師さん……ということですか?」
「ふふふ、そうです」
「……」
 まさか私が感じた視線は、竹内の視線なのだろうか。猟銃のスコープを覗いている竹内の視線を私は感じたのだろうか。
「長谷川さん、竹内が猟銃の免許を持っているからと言って、猟銃を普段使いの鞄のように持ち歩くなんてことはできません。もちろん車のトランクの中にもありません。どうぞご心配なく。ただ、竹内が危険を感じたら、竹内は私たちが散歩に出かけることを許しません」
「猟師の勘というやつですね。竹内さんてスーパーマンみたいな人ですね」
「ふふふ、竹内に伝えておきます」
「やめてくださよ」
「ふふふ」
 時間が一秒一秒前に進むにつれて、私と咲子の距離は縮まった。遠慮はだんだなくなり、言葉を選ぶことなく思ったことがそのまま言える。
 振り返ればこんなことは人生で初めてだった。私は女性と付き合ったことがない。結婚なんてとうの昔に諦めていた。人生は実に不思議なものだ。
 私と咲子はホテルに戻った。いつの間にか私と咲子は手を繋いでで歩いていた。とても自然に、夫婦のように私と咲子の手は繋がれていた。
 咲子の手を放したくない。そのとき私はそう思った。
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