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千一夜
第40章 第七夜 訪問者 影
 竹内は私のためにラフロイグも用意していた。飲み過ぎに注意しろということなのか、高級スコッチが入った瓶は350mlだった。
 ウイスキーグラスにラフロイグを注ぐ。ワンフィンガー、氷は入れない。
 グラスを掲げてラフロイグを見る。バーボン樽で熟成されたラフロイグの色を黄金色に例える人がいる。その通り、黄金は王様の色。イギリス国王チャールズ3世もこの酒を好んで飲まれたとか。
 グラスを持った感じ、そしてデザイン。昨日とは少し違うグラスだが、間違いなくこのグラスはバカラだ。
 舌の上にラフロイグをのせて香りを楽しむ。そのままそれを喉に流すと、熱い炎が胃の中から喉まで吹き上げてきた。大きく深呼吸をしてその熱を逃がす。
 バカラを見ながら私は人生について考えた。これでいいのだろうか? 高級車の後部座席にに身を委ね、就寝前に高級ウイスキーを飲むことが私の人生なのだろうか? 間違ってはいないか?
 私は先に休むと言ってベッドで横になっている咲子を見た。咲子はお嬢様で私は役所の職員。たとえ咲子が自分のベッドの隣で寝ていても、お姫様には近づくことなど私にはできない(そういうつもりもない)。
 うまくいくとはどうしても思えない。統括課長より、私には体育館館長が似合っている。体育館の館長をしながら、退職後の楽しみを見つけよう。家庭菜園でもやってみようか、私はラフロイグを一気にあおってそう思った。
 私も休もう。洗面室に行って歯を磨く。私はグラスを置き、カーテンを閉めるために立ち上がった。あれ? 何かがおかしい。真っ暗な窓の外を見る。
 真っ黒な屈斜路湖にポツンと一つ光が灯っていた。誰かが魚釣りのためにボートで湖に出ている? あり得ない。屈斜路湖にはニジマスやヒメマスがいるそうだが、漁業権のない人間はここでは釣りが禁止されている。つまりこの時間に釣りをする人間はいない。仮にいたとすれば密漁ということになる。
 そしてその光はモールス信号のように点滅するのだ。残念ながら私にはモールス信号を読み取ることはできない。
 いやいや光なんて存在しない。錯覚だ。飲み過ぎた覚えはないが、ついついアルコールの量が増えたのだろう。ビールもスコッチウイスキーも旨かった。私がそう思ってカーテンを閉め窓を背にしたときだった。
「痛っ!」
 私は背中に強烈な痛みを感じた。
 私はカーテンを開けもう一度湖を見た。
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