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千一夜
第40章 第七夜 訪問者 影
 点滅していた光が、扇を描くように動き始めた。湖の上に誰かがいて、私に手を振っているのではないかと思った。目の錯覚でなければ、ホテルが演出したアトラクションかもしれない。こうして湖を見ているのは私だけではないはずだ。きっとそうに違いない。
 このままずっと光を見てるのも悪くはないが、少し疲れた。そして私の体に入ったアルコールが、私に休むように命令している。
 歯を磨いて咲子の隣のベッドに潜り込む。目を瞑り、次に目を開けたとき、咲子が私に「おはよう」と朝の挨拶をする。時間はそういう風に流れ、私はその時間の中にいる。
 目を閉じると光が「こっちに来なさい」と手招きした。なぜか私はその誘いに乗らなかった。
「おはようございます」
 咲子の声だ。
「おはようございます」
 寝ぼけ眼で私は咲子に朝の挨拶をした。
「長谷川さん、うなされてましたよ」
 自分のベッドに座っている咲子は、私の顔を覗き込むようにしてそう言った。
「何か言ってましたか?」
「ええ」
「何と言ってましたか?」
「秘密です」
「秘密……ですか?」
「はい」
「……」
「長谷川さん、朝の屈斜路湖とっても素敵です」
「……」
 私は上半身を起こして窓の方に顔を向けた。見えたのは湖ではなくて北海道の空。幸い今日も晴天のようだ。
「長谷川さん、私お腹ペコペコなんですけど」
「ごめんなさい、急いで顔を洗ってきます」
「ふふふ、急がなくていいですよ」
「……」
 ベッドから起き上がり、私は洗面室に向かった。急いで顔を洗う。
 身支度を終えて、私は咲子と一緒にホテルの朝食会場に向かった。
 昨日同様、朝食会場の前で竹内が私たちを待っていた。ただ昨日とは違い、竹内は手に大きな紙袋を提げていた。
「おはようございます、お嬢様。おはようございます、長谷川さん」
「おはよう」
「竹内さん、おはようございます」
 私たちは朝の挨拶を交わした。
「お嬢様、私は先に行っております」
「わかったわ」
 咲子がそう言うと、竹内は私たちに一礼してから紙袋を持ったままどこかに向かった。
「長谷川さん、今日は屈斜路湖で遊びます」
「屈斜路湖で遊ぶ?」
「カヤックです」
「カヤック……って小さな船みたいなものですよね」
「ふふふ、そうです。小さな船を自分で漕ぎます」
「できるかな」
 不安が募った。
「長谷川さん、男でしょ」
「……」
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